リズはフカフカのソファーに座り、ロークの煎れたハーブティーを口にする。
フワッとジャスミンの薫りが広がる。
「ふぅ、やっと一息つけたな。今日は疲れた」
独り言を、ロークは何も言わず聞く。
二人は無言でフルーツタルトをつつく。
その沈黙を簡単に破ったのはロークだった。
「本日のお風呂はいかがなさいますか?」
しかし、これもいつもの会話だったらしく、リズは別段驚くわけではなく返答する。
「今日は…そうだな、バラにしよう。出来ればオレンジ色」
簡潔に述べると、ロークも頷く。
「かしこまりました。では準備をいたしますので、それまでお部屋でお休みになっていてください。」
「わかった。頼むよ」
ソファーから立ち上がり、グーッと伸びをし、寝室へ足を向ける。
仕事をしている時とはうって変わって、少し幼さの残る顔で、欠伸を噛みしめる。
「もう少しお顔を引き締めたほうがよろしいかと。あまりにも呆けすぎですよ。明日から長期休暇ですが、少し気を引き締めて・・・」
「はいはい」
気のない返事で、やる気のなさをアピールする。
その後ろ姿を黙って見送るローク。
今日はバラ風呂は用意しなくても良さそうだ。