そのために朝からこの城の女主人は、飾り付けるのに忙しい。


朝も早くから、バラをつんでこい、湯を沸かせ、薔薇風呂にしろ、やれ身支度だ、などと、こき使われている。




しかし少女は文句を言うこともなく、ただ淡々と仕事をこなしていく。




それが気にくわなかったのか、女主人は少女に向かって手近な花瓶を投げつけた。



「…すみません。私の不注意で…あとで片付けておきます…」




少女が謝ると少し気が晴れたのか、女主人はいい放つ。



「わかればいいのよ。ここの主人はわたくし。あなたではないの。あなたはこの城の召し使い、わかったらキリキリ働きなさいっ」



ようやく支度が終り、時間にも間に合ったようなので、解放される時間が来る。




「今日はお客様がいらっしゃるかもしれないわ、城の中全てを研いておきなさい」





無理な注文も、この女主人が居ないだけで気が楽だ。