残された二人。
普通なら、何の接点もない二人。
どういうわけか、二人の運命の歯車は少し交わっていたようだ。
「じゃあ、行きましょうか?お嬢さん?」
「そうですね。わたくしのことはフェニルと呼んでくださいませ。エスメラルダさん」
フェニルがそういうと、またもや妖艶な笑みを浮かべ、エスメラルダは言う。
「じゃあ、フェニル、私のこともエルダって呼んで頂戴。それから、私、敬語嫌いなの。普通に話してくれない?」
少し驚いた顔をしたがすぐにフェニルは返す。
「わかったわ、エルダ。今日は一日お願いね?」
フェニルが差し出した手を、エスメラルダは迷い無く握り返す。
二人を巻き込んで、歯車は静かに動きだしていた―――。