リズを見送った後、フェニルは仮の宿に入った。
「お帰りなさいませ、お嬢様」
ドアを開けるなり、爺が迎え出てくれた。
「ただいま」
笑顔でそう答える。
「楽しいことでもおありになりましたかな?」
自然と笑えるようになったフェニルを見て言い当てる。年の功恐るべし。
「遅くなってしまってごめんなさいね。今日またリズ様…シュトラール様にお会いしたの。いろいろ教えてもらっていたらこんな時間になってしまったの。あ、そうそう、今日伺ったお家でね…」
「まずはお座りになって、一息つきましょうか」
興奮気味のフェニルをいともたやすくなだめすかす。
「ただいまお茶をおいれいたしますから。お話はそれからじっくり伺いますよ」
フェニルからコートを受け取り奥のキッチンへ向かう。
小さなソファーに座るしかやることがなかった。