二人か乗り込むと馬車は静かに動きだした。



エスメラルダはなおも妖艶な笑みを湛え、頬杖をつきながらリズを見ていた。



リズはというと、仏頂面で同じく頬杖をつきながら、窓の外を眺めていた。





「相変わらずつまらなそうな顔をするのね。さっきはそんな顔じゃなかったのに」



「いつもこんな顔だ。嫌だったら見なければいい」



「ホント冷たいわね。まあいいわ。止めて頂戴」




最後の一言は闇色の御者に投げかけられた。



この馬車は秘密の部署特別仕様。


闇にまぎれて仕事をするのに特に優れている。




スーっと音もなく止まる。