予期せぬ来訪者だったにもかかわらず、リズはちらりと一瞥しただけだった。



「何の用だ、エスメラルダ」





「とんだご挨拶ね。久しぶりの再開だって言うのに」


エスメラルダと呼ばれた女は妖艶な笑みを湛えてリズに近寄ってくる。



「用がないなら俺は帰るぞ」


「ひどいわね。用があるからここで待ってたんじゃない」


少し、拗ねたような声色でリズを責める。





「用件は?」


お構いなしにリズは話を進める。



「ここじゃなんだわ。別の場所で話しましょう」



そう言った視線の先には闇色の馬車があった。



エスメラルダのしなやかな肢体はすでにそちらへ向かっていた。


気だるげに髪をかき上げ、歩を進めるリズだった…。