「とんでもない!!一生大事にしますわ!!ありがとうございます。お引止めしてしまい申し訳ありません。お気をつけて」
少し上気した頬で微笑む。
「ああ、ではまた明日。良い夢を」
そういって、颯爽と馬車に向かって歩き出す。
その後姿を名残惜しそうに見つめるフェニル。
今夜の宿のことなどいろいろ気になってしょうがなかったが、詮索したところでヒラリとかわされるだけだろう。
馬車が動き出し、やがて見えなくなる。
それでも少しの間その場に留まっていた。
余韻に浸るかのように。
この気持ちが何なのか、フェニルはうすうす勘付いていたが、このときは知らぬふりをしたのだった。。。