当然のようにフェニルが言う。


「…かなり危険だ…ここに残ったほうがいいだろう」


フェニルの残念そうな顔を見ると、つい承諾してしまいたくはなるが、危険度のほうが遥かに高い。


「ではここでお待ちしていますわ」



「いや、今日はこれから予定がある。ここで失礼するとしよう」



未だ仕事気分が抜けきらないリズは、堅苦しい言葉を残して去ろうとする。


あの、とフェニルが何か言いたげな顔でこちらを見る。


「何か?」

言い方が冷たくなってしまったのは何かしらの癖だろう。


「あの、今日は本当にありがとうございました。楽しくすごさせていただきました。それに…ありがとうございます、このネックレス…お返しできるものがあればいいのですが…」


ふっ、とリズの顔が緩む。



「いや、こちらこそありがとうと礼を言わなければいけない。実に楽しかった。それは、今日付き合ってくれたお礼の気持ちだ。取っておいてくれ。…もし必要ないなら捨ててくれてもかまわないから」


そういって寂しげに笑った。