宵の口の町は、不気味なほど静かだった。


その中を二人が乗った馬車が走る。


もう馬車自体は不要であったが、こんなに大きなものを不法投棄するわけにもいかない。



二人の間にあれから会話はなかった。



フェニルは、何を考えているのか俯いたまま顔を上げない。


やはり寒かったか。


なにやら勘違いも甚だしいリズの考えはフェニルが知ることはなかった。



リズも明日のことをどう切り出そうか、正直迷っていた。



出来れば彼女だけは巻き込みたくなかった。



まだ心の傷も癒えてはいないだろう。

笑顔もどこか寂しげだった。



そんな彼女を自分の仕事に巻き込んでしまった。


後悔したっていまさら遅い。





それなら後悔しないよう、何者からも守らなければ。




フェニルの居留している宿まであと少しというところ。





リズが口を開いた。



「フェニル、大事な話があるんだ。聞いてくれるか?」