見るに見かねたリズが、手を差し出す。


その手を取った瞬間力強く引き上げられる。



不意の事にバランスを崩したフェニルはリズに抱きとめられるような形になった。一瞬、目線の高さが同じになる。



ドキッとして、顔に朱が走る。



何事もなかったかのように手を離すと、厚手の毛布を肩にかけられ、座るよう促される。



そして、馬車が動き出す。


火照った顔を冷やすかのように、冷たい空気が頬を撫でる。




さっきのはどう思われたのかな、と隣のリズを見る。



凛々しい顔に、再び胸が高鳴る。


視線を戻し、少し俯く。


きゅっと毛布を握り締めて、リズにこのドキドキが伝わりませんようにと願うフェニルだった―――。