周囲のヒソヒソ話に、当の本人達は気付いていないようだ。 「ではわたくしの馬車で向かいましょう。お話しながらのほうが楽しいのでは?」 「そうですね。是非お願いします」 女主人の毒牙にかかろうとする青年を助ける者はいない。 もし助けたとしたら、自分が標的になるから。 いじめの原理と同じ。 そうして誰からの声もかかることなく、外へとつながる扉へ吸い込まれていったのだった―――。