「今日は一緒に夕飯もどうかしら?」
不意に婦人が話題を変えて話しかける。
「そんな!申し訳ないですよ!」
フェニルが予想以上の大声をあげる。
その声にその場にいた誰もが驚いた。
もちろん子猫もだ。
くすくす、と笑いながら婦人は続ける。
「そんなことないわ。私、嬉しくて。こんなに楽しいおしゃべりは久し振りなのよ。ぜひ、今日は夕飯に招待したいの。こんなお茶をするひと時ではなくて、もう少し長くお話させて頂戴?」
問いかけるような口調だったが、その問いに答えは一つしか用意されていなかった。
「ここは、ひとつお言葉に甘えよう?今日の仕事は早々に片付いてしまったし、他の仕事はまだまだ手をつけなくてもいい」
「でも・・・・」
と、まだ何か言いたげなフェニルを黙らせたのは、やはり婦人の一言だった。
「じゃあ、私のとっておきのストロベリータルトも付けるわ。これでどうかしら?」
「・・・お言葉に甘えさせていただきます・・・」
甘いものに目がないだろうと踏んでの婦人の一言は、予想以上に功をそうした。