「特別なものなんて使っててないのよ。よかったわ、喜んでもらえたみたいで」
婦人は少しだけ照れたような笑みを返すのみ。
リズは冗談ではなく気になっていた。
ロークがいれたものより美味しい紅茶があることに。
「これもよかったら食べてちょうだい。今日は何か良いことがありそうな気がしたから焼いたのよ。私の勘もまだまだ捨てたものじゃないわね?」
「本当に良かったです。ミラちゃんがみつかって。本当はこれから本格的に探すつもりだったんですけど、運よく出会って。」
「あらそうなの?」
意外な答えだったらしく驚いている。
しかし、こっちも驚いたのだから仕方ない。
あの出会いは果たして偶然だったのか。
裏で紹介屋が糸をひいていたと言われた方がよほど納得できるような展開だったのだから。
「どちらにせよミラちゃんが見つかってよかったわ。こんな素敵なカップルさんたちとお茶もできたしね?」
「えぇ!?カップルだなんてっ!シュトラール様は命の恩人なんです…」
赤面しながら答えるフェニルはちらっとリズを見たが、茶葉をききわけるのに夢中でカケラも聞いてはいなかった。
少しだけ落胆したあと、再び婦人に向き直る。
「今日はミラちゃんが見つかったお祝いをしましょう?」
元気よく答えたつもりだったが、その表情はくもっていた。