「おはようございます。姫さま」

小鞠が目を輝かせてしゃがみこむ。
「ちょうど食べごろですね」

「沢山出来てよかった。今のうちに沢山の漬物を作らなければいけないからの」

「そうね、半分は汁物用に乾燥させましょう」

「それにしても姫さま、最初はどうなることかと思いましたが、いまではこの畑なしではいられませんな」

畑を作ると言い出したのは花菜で、それを聞いた嗣爺は『庭園に畑? とんでもないことでございます』と渋い顔をした。

ちょっと反対されたからといって、へこたれる花菜ではない。『畑だって草花だもの、花壇となにも変わらないわ』と押し通した。

両親も畑の意味を知ればもしかしたら反対したかもしれないが、生粋の貴族である彼らは畑がいかなるものなのかもよくわからない。
なので花菜は『どんなお花をつけるのか、草花を植えて色々楽しんでみたいのよ』と誤魔化した。