「プール掃除のお礼に、
その日は俺がうまいことやっておくよ。」
1年生の先生でも無いし、
パソコン部の顧問でも無いし、
少なくとも僕は1度も見かけたことの無い先生だった。
「アンタダレ?」
チサトは目上に対してもペースを変えないからやっぱり“キテレツ”だ。
「丸井先生。俺この人から頼まれた。」
僕やチサトの疑問に、
荒木が答えてくれた。
それに続いて丸井先生が中腰になって僕達の視線により近づく。
「水泳部顧問の丸井です。
荒木君の友達かな?
悪いねお忙しいところ。」
「水泳部の顧問・・?
水泳部って無いんじゃ?」
「正確に言うと“無くなった”。
昨年まではちゃんとあったけど部員が誰もいなくなっちゃってね。
今年の掃除どうしようか悩んでた時に、
たまたま職員室にいた荒木君に声掛けたってワケ。」
なるほど・・。
他の先生から何か用事を頼まれて職員室を訪れた荒木が、
この人にも捕まっちゃったって事か。
なんとなく画が浮かぶ。
「丸ちゃん、じゃあ8/10ヨロシク☆」
・・出会って数秒の目上の人に“ちゃん”付けで呼ぶチサトはやっぱりキテレツだ。
中腰から立ち上がった丸井先生が笑顔で頷くと、
“風邪引かないようにね”
と言ってプールサイドをあとにした。