「俺、童貞なの」


その言葉に

電柱に止まっていたカラスが飛び立った。


カラスの方が驚いてどうするよ。


「俺の母親さ

男癖悪くて小さい頃からいろんな奴家に連れ込んでた。

貧乏だったから

家も小さくて逃げるとこなんてなくて。

テレビなんて無かったから

あの音がどうしても耳に入ってきて。

それがトラウマで

今まで付き合ってきた彼女と手すら繋げなかった」


「…へぇ」


その言葉でさっきの行動が腑に落ちた。


けれど、次の言葉で私の心は揺らいでしまったんだ。