「本当に申し訳ありません。悪気はないんです。ただ、時間がなくて」
これは言い訳だ。

「いいんです。私も神谷(かみや)のおじさまにどうしてもって言われて来ましたから」

神谷のおじさまとは、銀行の神谷支店長のこと。
俺自身も、「昔からの旧友のお嬢さんでとってもいい子なんだ」としか聞いていない。

「良かったら、外へ出ますか?」
「ええ」

ちょうど俺のコーヒーも爽子さんのオレンジジュースもからになったところで、席を立った。



さて、街に出たものの、これからどこに行こうか?

「爽子さん、どこか行きたいところがありますか?」
「いえ、お任せし」

ブブブ。
言いかけたところで、爽子さん携帯が鳴った。
メールのようだ。

「あの、田島さん。私は帰るように言ったんですが、父が気を遣ったらしくて、家の車がまだ近くにいるらしいんです。良かったらどこか行きますか?」

えええ。