「あの、爽子さんはおいくつですか?」
思わず聞いてしまった。

もちろん、事前に確認しておくべき事柄だと思う。
だが、俺はしなかった。
それは、最初から断るつもりだったから。
恩のある支店長にどうしてもと言われ、義理のつもりでここに来た。
お茶を飲み、街をブラブラして、夕食でもとって別れれば済むと思っていたから、相手のことなど気にもしなかった。

「島さん。田島さん」
え?
呼ばれた声で、自分が考え事をしていたことに気づいた。

「すみません」
「いえ。私は22歳、この春音大を卒業しました。特技はピアノを弾くこと。身長は163センチ。血液型はB型です」
きっと事前に知らせてもあっていたであろう情報を、スラスラと話す。
「僕は田島泰介です。28歳。血液型はB型」
「フフフ。知ってます。事前に履歴書を拝見しましたから」

そうだよなぁ。
事前に確認しておくのが礼儀だと思う。