これはただの劣等感。
運転手付きの車なんて無縁で生きてきた俺の、ひがみ。
ブランドの服を着て、高いアクセサリーを身につけ、暑さも寒さも経験したことがないような彼女。
見るからに、俺とは住む世界が違う人種だと思う。

「田島さんは、お嫌ですか?」
「え?」
まじめな顔で尋ねられ、顔を上げた。

「我が家がお金持ちだと知ると、7割の人はチヤホヤしてきます。わかりやすく態度を変える人も多いんです」
ふーん。
そんなものかなあ。
「残りは意地悪をしてくる人と、離れていく人。どちらにしても友達はできません。田島さんも、運転手付きの車で出歩く私がお嫌いですか?」
「いえ、そんなことはありません」

単に、俺の周りにはいなかっただけ。
彼女に対していい感情も、悪い感情もない。
ただ珍しいとしか思えない。

「良かった。嫌われるんじゃないかと内心ヒヤヒヤでした」
そう言って笑う顔は、ますます幼く見える。