「実胡、俺さ、彼女できた。」
家に帰ってみると、祐希がソファで寛いでいた。
私に気づくと立ち上がってニコッと笑った。
「知ってる。幸でしょ?」
「何だよ、もう知ってんの?」
つまんねぇの。
なんてぼやきながら、カバンを持ち玄関に向かう祐希。
「付き合うのはいいげどちゃんと大事にしてあげなよ?相手は祐希のこと好きなんだからさ。」
いつもの言葉を一文字も間違えず一息で言い切る私。
「うるせぇなぁ。実胡っていっつもそればっか。他に言うことねぇの?」
振り返った祐希は顔を歪めながら私を覗き込む。
「アンタがちゃんとしないからでしょ。」
呆れたようにそう言えば、祐希は何も言わずに帰ってく。
わかってるからそうするんだよ。
知らないでしょ?
ガチャっと音をたてて閉まるドアを見つめながら心の中でそう呟く。
「はぁ…」
小さくため息をついたら、何だか急に虚しくなった。