「バーカ…。こういうときは素直に甘えとくんだよ。」


不貞腐れたさくらの頭に軽く手を置く。


ふんわりとした長い髪がさらさらと手を滑る。


「うん…。でも…」


歯切れの悪い返事をするさくらに、俺は思わずため息を漏らす。


バカだな、さくらは。


普通、いちいちそんなこと気にしないだろ?


こんなん、普通に当たり前なのにな。


でも、そういうの気にしちゃうとろこが、さくららしいな。


「さくらは気にしすぎ。持つって言ってんだから持たせときゃいいの。その方が男も気分がいい。」


「……冬矢もぉ?」


子供をあやすように頭を撫でた俺に、不安そうな、不満そうな顔を向けるさくら。


そんなさくらを安心させるように、俺はできるだけ優しい声で励ましの言葉をかけてやる。


「俺のこと聞いてどうすんだよ。心配しなくてもお前の王子様なら喜んで持ってくれるよ。」


心配しなくても、お前の恋は叶うから。


俺が叶えてみせるから。


そんな思いをこめて、優しく励ました――


つもりだ。


なのに何だ?


「当たり前じゃん。大くんは優しいもん。そんなこと聞いてんじゃないもん。冬矢のバカぁ!!」


何、怒ってんだよ?