「祐希ぃ〜!!」


いつもより高い幸の猫撫で声。


そんなのにいちいち反応なんてしない、


フリをする。


祐希になんて見向きもしない。


興味がない、


フリをする。


ちょっと前まではズキズキと痛んだ胸も、今では全く痛みなんか感じない。


そんな錯覚さえ覚える。


そのくらい、自分の心を誤魔化すのが上手くなった。


祐希が彼女を作る度。


祐希が相談してくる度。


私はどんどん術を覚えていく。


ただの幼なじみのフリとか。


良き理解者のフリとか。


笑顔の作り方とか。


興味のないフリとか。


あの頃はできなかった、気の紛らわせ方だって。


どんどん術を身につけて。


その度、私と祐希の間には、私にしか見えない距離が広がっていく。