「お嬢さん、これはなんて料理だい?」

宿屋の店主に聞かれ、アーシェリアスはフライパンで丸く焼いたライスバンズを取り出す。


「これはライスバーガーというのを作ってるんです」


説明された店主は「バーガー?」と首を捻り、まな板の上に並べられたライスバンズを眺めた。


(そっか。この世界ではサンドイッチはあってもハンバーガーなんてないものね)


昨夜、酒場から宿へ戻ったアーシェリアスは、廊下でザックと別れたあと主人に頼み厨房を借りた。

そして、炊いたご飯に片栗粉と塩を混ぜ合わせて丸い形にまとめ、冷ましておいたものに、さきほど醤油を塗って油をひいたフライパンで焼いたのだ。

具はゴボウと人参で作ったきんぴら。

これも昨夜調理しておいたものだ。

本当なら牛肉で焼肉バーガーにしたかったが、肉を購入する時間もなかったので持ち歩いている食料バッグに入っていた野菜からチョイスしたところきんぴらになった。

醤油の香ばしい匂いが厨房を満たし、主人のお腹が小さく鳴る。


「良かったらひとついかかですか? お口に合うかわからないですけど……」

「いいのかい? じゃあ遠慮なく」


店主はウキウキしながら出来立てのきんぴらライスバーガーを火傷しないよう気をつけながら口に入れた。