「これは看板メニューになるのも納得だな」
シュタイルに寄ったら必ずブリーランでビーフシチューを食べるという旅人や商人も多いだろう。
実際、他のテーブルでもビーフシチューを食べている人は多かった。
「これ、明日も食べたいなぁ」
シュタイルを出る前にもう一度食べておきたいとアーシェリアスが零した時、さきほどシチューを運んできたウエイトレスがお水のお代わりを注ぎにやってきた。
「ぜひ明日も来てくれると嬉しいわ。あなたたちは旅の人?」
「はい、マレーアから来ました」
グラスを受け取りながらアーシェリアスが答えると、ウエイトレスは「へぇ。マレーアから。じゃあ、いいとこのお嬢様とお坊っちゃまなのかしら」とアーシェリアスからザックへと視線を移した。
「あなたなんて、まるで王子様みたいに綺麗な顔。ファーレンの王子様たちもとても素敵なお顔をしてるって噂よ」
もしかして、あなたが王子様? とウエイトレスは豊満な胸を寄せるようにしてザックの顔を覗き込む。