ティーノの言葉は冗談なのか本気なのか。

どちらにせよ、アーシェリアスにちょっかいを出され苛立つザック。

そもそも、アーシェリアスに対して欲が出たのもティーノのせいなのだ。

いずれどこかの姫と政略結婚をするであろう自分の立場で、アーシェリアスの恋路を邪魔できるはずもないのは承知している。


(だが、それでも……)


閉じ込めたはずの想いを胸に立つザックの姿に、ティーノは思い付いたように眉を上げる。


「もしかして、ザックさんはアーシェリアスさんの恋人なのかな?」


問われ、アーシェリアスは勘違いされたらザックに申し訳ないと思い、否定すべく口を開いたのだが……。


「そうだ」


えっ、という声が出そうになるが、寸でのところでアーシェリアスは口を噤む。

背中からはザックの表情は見えないが、ティーノが肩をすくめてアーシェリアスに微笑みかける。


「それなら仕方ないな。じゃあ、ザックさんに飽きたら、遠慮なく僕のところにおいでね」

「えっと……ありがとうございます?」


何と返したらいいのかわからずそう言うと、ティーノはアハハと笑って「明日、よろしくね」と告げてから去っていった。


「こちらこそ、よろしくお願います!」