少女として過ごしてきた日々の中で得た知識では、ここは間違いなくナティオ大陸の西方に位置するファーレン王国だ。
ファーレンは緑が多く農業が盛んな国で、現在は女王が統治している。
少女の父はファーレン王国内の西、マレーアという港町の領主であり、三日前に最愛の妻を亡くしたばかり。
(お母様……)
前世の記憶が蘇った為に意識が逸れていたが、もう二度と会えない母の優しい笑みを思い出すと胸が痛い。
莉亜だった時の母のことも脳裏に過ぎり、さらに寂しさを募らせたところであることに気づき、瞳に滲んだ涙がぴたりと止まる。
「……お母様が、亡くなった?」
主人公ミアの母は生きているはずだ。
ミアは両親とともにマレーアに引っ越すのだから。
と、ここでさらなる矛盾に気がついた。
ここは、すでにマレーアだ。
そして、ミアの父親は伯爵などではない。
少女はそこで初めて自分が誰であるのかを意識する。
つ、と視線を壁際にかけられた姿見に移し、八割方ほど自分が誰なのか検討がつきつつも、天蓋付きのベッドから降りた。
ファーレンは緑が多く農業が盛んな国で、現在は女王が統治している。
少女の父はファーレン王国内の西、マレーアという港町の領主であり、三日前に最愛の妻を亡くしたばかり。
(お母様……)
前世の記憶が蘇った為に意識が逸れていたが、もう二度と会えない母の優しい笑みを思い出すと胸が痛い。
莉亜だった時の母のことも脳裏に過ぎり、さらに寂しさを募らせたところであることに気づき、瞳に滲んだ涙がぴたりと止まる。
「……お母様が、亡くなった?」
主人公ミアの母は生きているはずだ。
ミアは両親とともにマレーアに引っ越すのだから。
と、ここでさらなる矛盾に気がついた。
ここは、すでにマレーアだ。
そして、ミアの父親は伯爵などではない。
少女はそこで初めて自分が誰であるのかを意識する。
つ、と視線を壁際にかけられた姿見に移し、八割方ほど自分が誰なのか検討がつきつつも、天蓋付きのベッドから降りた。