「ハーピーが教えてくれた幻の食材ってどんなのかしら」
予想以上に暗かった為、松明に火を付けたザックが「洞窟だからキノコじゃないか」と答えた。
確かにじめっとしたこの環境であればそれもあり得そうだとアーシェリアスが頷く横で、同じく松明を手にしたノアが辺りをオレンジの火で照らしながら「幻ってことは、黄金に輝くキノコとか? それとも虹色の染まったキノコ?」と想像を膨らませていく。
「虹色って、それ絶対毒キノコだろ」
「可愛らしいんだから毒なんて持ってないのっ」
ふたりの会話を聞いて、なんとなくミアの事を思い出したアーシェリアスは苦笑した。
(可愛いけど、毒持ってる感あるなぁ……)
しかし、毒に気付かないアルバートには極上のキノコなのだろう。
もしくは、魅了の魔法をかけるキノコかもとミアキノコについてひとり妄想していると、前を歩くザックが足を止め、右方向へと松明を動かした。
ぼんやりと灯りに照らされたのは、でこぼこした石の壁と……地面をぬめぬめと這うゲル状の魔物。
「スライムか」