由梨とは大学で知り合った。真っ黒な長い髪を風になびかせて、すれ違うたびに花の香りがする彼女は、見た目も所作も「お嬢様」という感じだった。実際、医者の娘だというから似たようなものだ。

私とは真逆の存在。初めて由梨を見た時から、彼女は私なんかとは到底釣り合わない高嶺の存在だった。それでも魅力的な女性として、由梨のことは学内で見かけるたびに目で追っていた。まさか、こうして一緒に暮らすような仲になるとは想像もしてなかった。

大学2年にあがって、同じゼミをとっていた私と由梨は少しずつ会話をするようになった。話せば話すほど彼女は完璧で、控えめで慎ましい喋り方だが、ところどころユーモアもある。話す時も聴く時も、花がほころぶように笑みを浮かべる。同い年の女の子にここまで“綺麗”と感じたのは初めてだった。