相手のことを一切考えない作戦だと思った。
だけど、天形相手ならそれが最善なのかもしれない。


押され続けたら、周りがそうだと決めつけたら、最終的には認めてしまうのかもしれない。
嫌よ嫌よも好きのうち……なんてね。


自分で言ってて悲しくなってきた。


天形は大きなため息をついた。


「そんなことより、お前。油売ってる暇ないだろ」


篠田さんにとっては大切なことを軽くあしらわれてしまい、篠田さんは頬を膨らませ、拗ねてしまった。


天形がさらに怒ろうとするけど、それを聞かずに篠田さんは人混みに消えた。


「……じゃあ俺、クラスのほうに戻るから。二人はゆっくり楽しんでって」


これ以上天形と篠田さんのツーショットを見られない、帰りたいと遠回しに伝えようとしたけど、それより先に私は周りを見た。


三人で来たはずなのに、なぜ二人なのかと思ったからだ。


「……ねえ、夏希。沙奈ちゃんは……?」


沙奈ちゃんの姿が見当たらなかった。
どこに行ったかなんて簡単に想像できるけど、一応、恐る恐る聞いてみる。


「先に行って遊んでおくってさ」
「やっぱりか……」


天形に伝えなくても勝手に帰ればいいと思ってたのに、帰れなくなった。


「どれだけ楽しみにしてたの、沙奈は。てか、自由すぎない?」


夏希は呆れた表情をしている。


自由なのは沙奈ちゃんのいいところだと思うけどな。


「なんか、文化祭が好きみたいよ?」
「だとしても。周りを見ろって話」