「ケイさんも今日はスーツなんですね」

笑った後の息が少し落ち着いたところで、ジャケットを脱いでネクタイを緩めた姿もいいなと、改めて彼の方をまじまじと見た。

ストッパーをかけずに思ったことをそのまま口走るのはほろ酔いのサインだろう。

「今日はちょっとお堅いミーティングがあってね。ただそれが終われば今日は仕事が終わりってわかってたから、あずさちゃんに声かけちゃった。
ここ一ヶ月くらいわりと忙しかったんだけど、ちょっと落ち着いてきたタイミングで会えて良かったな。
こういう言い方するのもおかしいけど、いままで同じきっかけで知り合った女の子もいるんだけど、なかなか身の上の話とかされてこちらが辛くなったりとか、話の内容が子供っぽすぎて疲れちゃったりとか、そんなことばっかりだったんだよね。
まあ、割り切りの関係だしそこは我慢すべきかと思ってたんだけど。
あずさちゃんはその点落ち着いてるし、なんか雰囲気に余裕があって大人っぽいから居心地がいいなと思って。
この前別れた時からまた会えたらいいなって思ってたから嬉しいよ」

そりゃ当たり前だ、これでも一応社会人なのだからと言いそうになるのをぐっとこらえて、素直に嬉しいと伝えた。

感じることは違うけど、本当に需要と供給が一致して一緒にいる時間を楽しめる相手と知り合えたことに喜んでいるという点で通じ合えていると思ったら、なんだか心がくすぐったかった。