「決まってるじゃん。お姫様に危ないことさせたんだよ?バレたら俺も佐々木さんも撃たれて死んじゃう」
「いつも思うけど、そんなことはないでしょう」
「いいや。和佳菜が分かってないだけだよ。あの人、和佳菜のことになると本当に余裕が無くなるんだよ」
君は愛されてるよ。
遠回しにそう言われた気がしたけれど、あたしはちっともそうは思えない。
愛されていたら、二度も置いていったりしないもの。
「…あたし、帰らないから。ここにいる」
静かにそう答えると、瑞樹が目を見開いた。
「えっ!?なに言ってるの!そんなのあの人が許すはずないじゃん」
「帰らない。なにを言われても、どんな手を使われても帰らないの」
これには瑞樹が慌てたらしい。
「いや、え、ダメだよ!あの人明日来るんだよ。…多分誰か寄越すんじゃなくて自分で来ると思うし。え、ねえ断れんの?俺無理だからね?むしろマーク側にまわんなきゃいけないんだからな」
「それはだめ。ねえ、瑞樹。貴方はあたしの味方でしょう?」
瑞樹の両手を握ってお願いする。
敢えて目は見ないの、初めはね。
それからゆっくり視線をあげて…。
「…確信犯め」
頬をほんのり赤く染めた瑞樹があたしを睨む。
「なんのこと?」
分かっていて落ちる貴方も貴方だとあたしは思うけどね。
こういうことは結構得意。
これでマークに色々我がままを聞いてもらってきたから。
「…やれるだけのことはするよ」
「信用できないわねえ」
「俺はその場限りで色目使う女になんかには従わないの」
どうやら作戦は失敗したらしい。
本当に、つれない男。