店舗側の入り口から中に入ると、カウンターの上に封筒がひとつ置いてあった。
「…これのこと?」
「あたり。全部英語だけど読める?」
「あたしが何年アメリカに住んでいたと思っているの?」
そうだった、と困ったように笑う。
震える手で、そっと封筒を開けた。
封が開いていて何故かなと思ったら。
「俺が先に読んだから」
瑞樹が簡単に答えをくれた。
「マーク可哀想。あの人、プライバシーも何もないのね」
「そんなもんでしょ。分かってて手紙をよこしたんだろうしね」
手紙をぎゅっと握った。
手が、震える。
止まらない。
「怖い?」
「怖い」
この中に答えがあるのに。
見るのがどうしようもなく怖い。
「なら止める?読んであげるよ」
その言葉に首を横に振った。
「自分の目で見るから」
あたしは逃げない。
マークからも、逃げてなんかやらない。
ちゃんと、戦ってあげる。
息を吸った。
「『…久しぶり。元気にしてる?最近会えなくて寂しいよ。最近漸く君を受け入れる体制が整ったんだ。……次の日曜日、迎えに行くから、荷物をまとめて待っていてね。愛してる、よ。………マーク・スティーブン』」
慌ててカレンダーを確認する。
「…次の日曜日って、明日じゃない!」
え、明日迎えがくるということ?何言っているの?
「これはいつ来たの!」
「和佳菜が丁度大阪に向かった日に来たよ。ほんと、運悪いよね」
「…そんな。あたし、今日帰ってきたのに」
「そんなのマークは知らないもの。俺この件上に報告してないし」
「え、何故?」