そのあと信号が青に変わったらしく瑞樹はバイクを走らせるために再び前を向いてしまった。
「どういうこと。ねえ!」
あたしの声に聞こえないフリをしたまま。
…マークから、手紙?
なんのために?
なにが目的?
もしかして、瑞樹や佐々木さんが慌ただしくしていたのと関係がある?
分からない、あたしはいつもマークがわからない。
大好きな人だったのに、その心のうちは決して見せてくれない。
…貴方はなにを求めてているの?
分からないまま数日ぶりのMargaretに到着する。
「無視はしないでよ」
ヘルメットを外しながら文句を言えば。
「してないよ、前向くと周りの音聞こえなくなるの」
平然とした顔がそう言った。
嘘つき。
それだったらなんのことって返す方が正解だ。
だって、“気がつかなかった”のでしょう?
「嘘は上手につきなさいよ」
せめてあたしに知られないようにはしなさいよ。
あたし、そこら辺の勘はよく働くから無理でしょうけど。
ふふっと笑って反論しない瑞樹はやっぱり確信犯だ。