新幹線に揺られること、1時間。
「お帰り、和佳菜」
駅まで迎えに来てくれたのは瑞樹だった。
「瑞樹、バイクを運転出来たのね」
「そりゃ族にいた頃は乗ってたからね」
「…免許は取ってるわよね?」
「取ってなかったら歩いて迎えに来てたよ」
呆れながらヘルメットを渡す瑞樹はなんだか見慣れない。
バイクが走り出す。
仁に乗せてもらっていた時を思い出して笑えてしまった。
ほとんど倉庫には来なかったけど、決まってあたしを迎えに来る時間はやってきて。
あの頃は仁が何考えているか全くわからなかったけれども、あの優しさは変わらない。
会いたいな、…数時間前に会っていたのに。
本当あたしの心って難しい。
まだ許せていないあたしの傷はラブホテルのこともあって深いのに。
簡単に許すって言えない。
千夏ちゃんから話を聞いた時は許したって思っていたのに。
その難解さを学んだ。
「どーしたの。ご機嫌じゃん。仁に会えたから?」
信号に引っかかってバイクが止まっている時、振り向く瑞樹が笑った。
「ご機嫌じゃないわよ。そういえば、瑞樹と仁、知り合いだったんですって?何故言ってくれなかったのよ?」
「だって和佳菜勝手に勘違いしてるし。そのままの方が面白いと思って」
「…ひ、人を面白がらないでくれる!?」
ケタケタ笑う瑞樹にぐっと低い声を出すが、なおも笑っていた。
ほんと、こんなことをして、なにが楽しいんだか。
今度はあたしの方が呆れるのだった。
「…そんな楽しいところに悪いけどさ。今日は手紙が届いてるんだよね」
「手紙?誰から?」
少し顔を歪ませたのは気のせいか、わからない。
「マーク様、から」