簡単な挨拶もそこそこに二人手を繋いで店を出ると眩しい日差しが降り注ぐ。
道行く人が勇菜達の姿を見て驚いたり声をかけたりする中、二人は短めに対応しながら映画館にやってきた。

「楽しみだね、隆君の初主演映画!」

「自分の演技を見るって、すごく恥ずかしいんだけど……」

「そんなこと言って自分の事を客観的に見れないといつまで経っても成長できないってお兄ちゃんが言ってたよ」

「耳が痛いな……」

チケットを買ってポップコーンもドリンクも買って、後ろの席に座って周りを見渡すとたくさんの人達が入っているのが見えた。

「大盛況だね」

こそこそっと話しかけると隆矢は嬉しそうに頷く。
暫くして薄暗くなり、近日公開予定の映画の予告を見終わるといよいよ映画が始まった。

映画の中の隆矢は普段と全く違う表情と話し方で、鋭い目付きに少ない口数、何があっても表情が変わらないクールな青年の役だった。

すごい、隆君格好良い……!

両手を口に当ててドキドキと高鳴る胸がうるさく感じるほど勇菜は隆矢に夢中だった。
ヒロイン役とも言える美佐が出てきて隆矢にくっつくシーンなどは胸が痛んだけれど、それを抜きにしてもとても格好良い。
唯一の救いはラブシーンがないことで、いつかは免れないのだろうけど付き合いたての今そんなシーンを見せられたら気持ちがついてこずに泣いてしまう自信があるほどだった。