「何？停電？」

「いや、少しだけ明るいぞ」

「え、じゃあ一体……」

『みなさん、クランクアップおめでとうございます』

ざわざわしていた会場にマイク越しの声が響き渡った。
この声の主に思い当たった人達は、え？嘘、まさか……。とさっきとは違うざわめきが起こりつつある。

『本来、部外者である僕達が出てくるのは場違いかもしれませんが、主題歌を歌わせていただいたご縁があり監督に招待していただきました』

陽人の言葉にその場にいた全員が監督の方へ向くと監督は静かに頷いた。

『つきましては、せっかくの機会なので一曲歌わせてもらってもいいでしょうか？』

きっとさっきの従業員と監督の会話はこの事だったのだろうなと隆矢は理解した。
周りが陽人の提案に歓声と拍手を送っていると会場にあったステージが少し明るくなり、背中合わせに立つ二人の人物の姿が遠目にも確認できるようになると静かに音楽が流れ出した。

久しぶりに見る勇菜の姿に隆矢は目を細めると心臓がトクトクと鼓動し、服の上から心臓の辺りを鷲掴みにしてその姿だけを見ていると、ステージの勇菜と目があった気がして柔らかく微笑まれた。
ドクンッと一際大きく動いた心臓に隆矢が落ち着かせようと小さく息を吐き出しているのを見て監督が、次回作は初恋物もいいなぁ。と呟いていた。