「なんで…」
「ん?」
「なんで来てくれるの…」

桃の声が涙で震えている。

司は桃を抱き締める手に力を込めた。

「ちゃんと聞こえた。」
「……」
「桃の声が聞こえたんだ。」

「もう…なんで…。」
「大丈夫。桃。大丈夫。」



自分から手放したのに。
この温もりを手放したのに。
またこの温かさを味わってしまったら二度と放せないかもしれない。

なのに…。

桃は必死に司にしがみついて声をあげて泣いた。