「ねぇねぇ」

身体を揺さぶられる感覚。

重たい瞼を少しひらく。

「ねぇ、はるちゃんってば」

寝ぼけた頭で彼の言葉を聞きとる。

「どうしたの?あきちゃん」

「今日会社の奴らと飲み会があってさー」

そう口にする彼をぼんやり見つめて
あぁ、またか。と思う。

「3万円だけ貸して!」

甘えるように言う彼に
3万円もだろ。と
心の中で言い返す。

「もー、仕方ないなあ。
あきちゃん、飲みすぎちゃだめだよ」

そう言いながら
引き出しの中の封筒を取り出す。

こういう時のためにしてあるタンス貯金てやつだ。

普段から財布にはそんなにお金を入れていない。

あたしが自分自身に使う事が
あまりないからだ。

彼に与えたお金が
返ってきた事なんて1度もない。

与えたと思ってる時点で
わかってはいる。