大切なものが
大切ではなくなった時。

あたしは、
迷わずここに来た。

1度来た場所。

あの時は、思いとどまった。

いや、怖かった。
悲しかった。

死のうとした事が。

なのにあたしは、
懲りずに来てしまった。

ただ1つ違うことがある。

今日は飛べる。


怖くも、悲しくもない。

すっきりしている。

夜の歌舞伎町は
汚くて、
臭くて、
誰も何にも関心が無くて。

今のあたしには
心地よくて。

もう3時間はここに居るのに、
飽きなかった。

これが最後の
あたしの世界だから。

寒くても痛くても、

これも最後だから。

思いきり浸って
思いきり可哀想になって

悲劇のヒロインを演じ切って

終わりにしたかった。


「あーーーーーーーっ」

叫んだ。
たくさん叫んだ。

「さよなら」

最後にめいいっぱい叫んで、

あたしは世界から
居なくなった。