『さんは要らない。朋也でいい』


『そんな…』


『恭香は、俺のこと、朋也って言えないの?』


本宮さんは、急に優しい目をしたように見えた。


声も…優しい…


さっきまでと、ギャップが…


また、顔が近づく…


ゆっくりと…


私は、自然に後ずさりした。


『逃げないで』


やだ、本当に近いよ。


『ごめんなさい。私、本当に名前で呼ぶとか、ましてや呼び捨てなんて無理です。それに、こんな風にされて、ちょっと怖いし、からかってるなら止めてもらえませんか?』


そういうと、今度は、あきらかにちょっと怖い顔になった。


『からかってるように見える?』


少しの沈黙。


『わ、わかりません…』


本宮さんが、私から離れた。


『そんな風に見えるなら、ちょっと心外だな。でも…俺は…怖がらせるつもりはないし、からかってるわけでもない』


『すみません…』


『謝らなくていい、早くこれ済ませよう』


淡々と、本宮さんが言った。


本当にもう、よくわからない…


私達はとにかく、残りの仕事を終え、会社を出た。