「うわー、来ると思った。
俺が呼んだの帆乃先輩だけなのに」


すっかり誰もいなくなった教室で、葉月くんがぼやく。


「しかもその様子だとうまくいったような感じだし。残念だったなあ。うまくいかなくなって、帆乃先輩が弱ってるところを狙おうと思ったのに」



「葉月くんはそんな悪い子じゃないよ…」


「えー、なんで?2人の仲を引き裂こうとしたのに?」


「それはやめてほしかったけど…。
でも素直に、真っ直ぐに気持ち伝えてくれたから。

あと、わたしが言いたいこととか、ぜんぶ言い返してくれて、かばってくれたし」



「そうやって言うくせに、俺を選んでくれないんだね。ずるいよ、帆乃先輩」


……傷ついた表情。


口では綺麗事のように並べても、結局わたしは自分の幸せを取った。


これじゃただの偽善者みたいだ。



「……なーんてね。
そんな暗そうな顔しないで。帆乃先輩にそんな顔させたら俺が三崎先輩に恨まれるからさー」