「一口ちょーだい」
そう言われたからナイフとフォークを差し出すと、ユウは左右に首を振った。
「え、なに?」
食べたいんじゃないの?
冗談だったとか?
「そうじゃなくて。あーんして」
わたしに向かって口を開けて、パンケーキを口の中に入れてもらえるのを待っている。
あ、あーん……!?
難易度高くない!?
「え、ちょっとそれは……」
誰に見られているか分からないのにそんなことできないよ。
「そういうのいいから早くして。ね、美蓮?」
「もう、わかったよ」
子犬のようなきゅるん、とした瞳で見つめられたら従うしかなくなってしまう。
そして、この人がわがままだということを忘れていた。
一度言い出したら聞かないから仕方なく折れるしかない。
そう思って、一口サイズにパンケーキを切ってユウの口元まで持っていく。
すると、パクッと食べてモグモグと口を動かしている。
なんか……ハムスターみたいで可愛い。