…なんで、村井が可哀想なのか分からない。
むしろ、被害者は私なんだけど…



「先輩は優しいし一筋だし、何より笑顔が素敵なの」



「でも彼女いるじゃん、村井のことも考えてみたら?」
最近ハマってるらしいコンビニにの練乳アイスをたべならがらそう言う梓。



「絶対やだ…」
あいつだけはほんと無理…
村井が先輩みたいになってくれたら考えなくもないけど…いや、やっぱり無理だわ。



「まぁ、そこまで言うなら仕方ないけど。あいつ…そんな悪いやつじゃないよ」
ボソボソってそう言う梓。小さすぎて最後に言ったことが聞こえなかった。



「何かいった…?」


「…別に」
そう言って梓は最後の1口が残っていた練乳アイスを食べた。
「そんなそのアイス美味しい?最近毎日食べてるけど」
わざわざ昼休みに学校の前のコンビニで買いに行く梓を不思議に思った私はそう聞いてみた。



「うん、美味しいよ。」



「ふーん、じゃあ私も食べて見よっかな」



「ダメ」
軽い気持ちで言っただけなのに真剣な顔でそう言う梓。



「なんで…」



「好きな人がハマってるって言ってたから私も食べただけ。わざわざ沙奈が食べる必要ない」
お弁当を片しながらそう言う梓の好きな人は未だに誰か教えてくれない。いずれ教えるって言われたけどいつになるのか…まぁ、別に梓が話したくないならいいんだけど。



でも辛いこととかあるなら話して欲しいって思うし何も話してくれないから私じゃ頼りないのかなって不安になる。
「あのさ…別に私が好きな人が誰か言わないのは沙奈が頼りないからじゃないよ、まだ時が来てないって言うか…まぁ、私にだって色々あるのよ」



そう言って切なそうに笑う梓は嘘は言ってないってわかる。今、ほんとに辛い恋をしてるんだなって思う。
辛いなら1人で抱えて欲しくないんだ…



「わかってるよ、でも辛かったら話してね。友達なんださら」



「うん、ありがとう!」
私達はその後、昼休みが終わるまで色んなことを話した。
梓といるとやっぱり楽しくて、先輩のことも今朝のことも忘れられるんだ



先輩に彼女がいるのはやっぱいくら美香先輩が彼女だとしても辛いし、時々泣きたくなる時もある。だから忘れたい時だってある。こうゆう時、改めて友達って大切だなって思うんだ…



私はいつも梓に助けてもらってばかりだからいつか私も梓を助けたい…だから梓…待ってるからね…
「先輩、買出し行きますよ!」

そう言って笑顔で駆け寄ってくるのは俺の友達の妹で委員会の後輩。いつも元気いっぱいで、笑顔が可愛いくていつも俺を癒してくれる。辛い実行委員の仕事も沙奈ちゃんがいるから頑張れている。


「よし、行こっか」
俺は沙奈ちゃんの隣に並んで委員会の教室から出る。
教室を出る時沙奈ちゃんのクラスの男子に睨まれたけど気付かない振りをした。


確かあいつは、村井 俊(むらい しゅん)。見てれば分かるが沙奈ちゃんに好意を寄せている。でも、沙奈ちゃんは村井のことは好きじゃない、完全な村井の片思い。



優しい沙奈ちゃんは村井の相手をしてあげている。
なんだかんだ楽しそうにしている二人を見て俺の心は乱される。嫉妬ってやつだ。



俺はいつの間にか沙奈ちゃんに惹かれていた。
いつも笑顔で俺のとこに駆け寄ってくる沙奈ちゃんが可愛いくて仕方ない。

「先輩...?」


俺の顔を覗き込んで心配そうに見つめる沙奈ちゃん。
沙奈ちゃんの方が少しだけ背が低いから俺の顔を見る時は自然に上目遣いになる。



あー、やばい...可愛いすぎでしょ
沙奈ちゃんは自分が可愛いこともっと自覚した方が良いよ...ほんとに


「あ、ごめん考え事して、お店入ろっか」


いつの間にかお店についていて、俺達は店に足を踏み入れた。


必要な物を買い俺達は店を出て元来た道へと歩き出す。

腕時計で時間を見てみるとみんなが帰ってくるまでら1時間もあった。学校からここまでは10分くらい、10分前に着くようにしても30分以上時間はある。


早く戻っても材料が揃ってないから何も作業が出来ない。時間どうやって潰そうか...そう悩んでいた時沙奈ちゃんの言葉を思い出した。


「私、1度パンケーキ食べにいってみたいんですよー!」


いつもの様に沙奈ちゃんと優と彼女が登校している時ふとそんなことを言っていた。

「ね、沙奈ちゃんパンケーキ食べに行こっか時間あるし」

「でも寄り道は...」

「委員長の俺が特別に許可をだすよ、みんなには秘密だよ」

そう言うと沙奈ちゃんは目をキラキラさせて頷いた。
「どれにしよ〜」

店に着きさっそく、楽しそうにメニューを見る沙奈ちゃん。楽しそうにしている沙奈ちゃんを見て俺まで楽しくなる。やっぱり沙奈ちゃんは最高だ

「何で悩んでるの?」

「これとこれです」

そう言って沙奈ちゃんが指したのは生クリームがかかっていて、いちごが飾ってあるパンケーキと焦がしたマシュマロが乗っていてさらにアイスがトッピング出来るようになってるパンケーキ。

「じゃあさ、俺マシュマロの方頼むし沙奈ちゃんはいちごのを頼んで、で、はんぶんこしよ」


「いいんですか?」


「大丈夫だよ」


「ありがとうございます!」

って笑顔で嬉しそうな沙奈ちゃんを見て俺の顔はみるみる赤くなっていた。


「先輩?顔、赤いけど大丈夫ですか?」
そう言ってまた上目遣いで俺をみる
いや...可愛いすぎる


「だ...大丈夫!注文しよ!」

俺は誤魔化すように店員を呼びパンケーキを頼んだ。
「おまたせしました〜」



数分後、僕らが頼んだパンケーキが運ばれてきた。
ものすごく美味しそうだ。



沙奈ちゃんも目をキラキラさせて必死でカメラに収めている。



「先輩!美味しそうですね!私、幸せです!」



ほんとに幸せそうにそう言う沙奈ちゃん。
喜んで貰えてよかった...



「ん〜、美味しい!美味しいですよ先輩!先輩も食べましょ!」


「沙奈ちゃん口に生クリームついてる」


「へ?どこですか...?」


「ここだよ...」

そう言って俺は口元に着いた生クリームを拭った。


「せ...先輩...?」

「えっ?.....あ、あ、ごっ...ごめんねっ...!」


みるみる赤くなる沙奈ちゃんの顔を見て我に返る、俺は何をしてんだろう...沙奈ちゃんの前では自分を保てなくなる。


「い...いえ」
「.....」

恥ずかしさのあまりお互い無言になる。

そんな沈黙を沙奈ちゃんが破った。

「あ...あの!美香先輩とは最近ど...どうですか?相変わらずラブラブなんですか?」


「.....」


「...先輩?」


「えっ...あ、ごめん、そ...そうだよ!俺と美香はラブラブだよ」

歯切れが悪い言い方になってしまう。
上手く...誤魔化せてるだろうか...


確かに俺は美香と付き合ってはいる...けど、美香に対する"好き"って気持ちはない。


それでも美香と、付き合い続けてるのは理由があった。


美香にも沙奈ちゃんにも最低な事をしているのは分かってる...けど...俺は怖かった、沙奈ちゃんに真実を知られるのが...嫌われてしまうのが怖いんだ。


結局俺は自分のことしか考えてない最低なやつなんだ
ーーーあれは、中学2年生の話に遡る。

中学2年俺と美香とクラスメイトほぼ全員で親に内緒で夜中に肝試しをするために学校へ侵入していた。


男女のペアになって三階建ての校舎を歩くという良くありがちなルート。


もちろん俺と美香はペアになった。



俺と美香は前から5番目、割と最初の方だった。


前のペアが戻ってきて俺達の出番になった。


家から持ってきた懐中電灯を片手に俺達は歩き出す。


まず、俺達は3階を目指した。


美香と隣に並んで歩いている。
美香は怖いのが苦手で俺の腕にしがみついて歩いていた。


怖いのが平気な俺でも流石に夜中の不気味な雰囲気の学校に恐怖を感じていた。


俺達は3階、2階を順調に周りスタート地点に繋がる階段を降りようとした。


その時、懐中電灯が運悪く電池が切れてしまった。
階段の段差も分からないくらい真っ暗な闇に包まれていた。