『すみません、友だちで・・・・。』

そう言ってまた歩きながら原口さんに話しかけた。

『あれ、全部売ったってすごいね。かっこよかったからね、彼ら。』

笑いながら言う原口さんにわたしはすかさず

『いやいや原口さんだって相当な人気じゃないですか!!そのへんの芸能人よりよっぽどかっこいいと思いますけど。』

本音を言った。

言った後に少し恥ずかしさがあったけど。



原口さんは驚きながらも笑って

『そんな褒めてもなにもないよ。しかもありえないことばっかり。』

と苦笑いで言ってた。

原口さんもわたしと一緒で謙遜型なんだろうと思った。



そして車に戻り、バイト先に原付を置いていたのでそこまで送ってもらうことになった。

今日のお礼をたっぷり言うと原口さんも楽しかったと言ってくれてわたしは有頂天になった。

楽しかっただなんて・・・。

ただ一緒にいただけなのに!!!


社交辞令かもしれないのにやっぱり原口さんに言われると嬉しくってしょうがない!!

バイト先に着くと夢から覚めたような感じになったが、また明日と言って車を降りた。

シンデレラの気持ちがよくわかった気がした。




沢村さんに見つかったら殺されるかもしれないと思ったけど、どうにか見つからずにすんだ。

よかったよかった。



家に帰ると理沙ちゃんと知香ちゃんに花火に行ってきたと言うと

『だれと~??』

と冷やかされ、原口さんと言うと原口さんのかっこよさを知っている2人はすぐにくいついて

『ズルイ。』

という言葉を連呼していた。
帰ってからわたしは原口さんにメールを入れた。

原口さんの連絡先は知ってるけど、バイト以外の用件で連絡することは初めてだった。


【今日は本当にありがとうございました。いい夏の思い出になりました。また明日からバイト頑張りましょう。】


ほんのお礼程度だが、本当に楽しかったしいい思い出になった。

原口さんと出かけるなんてことは一生ないと思っていたから。


その1分後に携帯が鳴った。

音楽がバイト関係のグループの音だったので原口さんだと思った。


返事早っ!!!

メールを見てみると、わたしの送ったメールがそのまま返信されていた。

意味がわからず返事をしようかしないか迷ったが、やはり返事をするとわたしが返事を強要してるような感じで取られそうだと思い、放置しておいた。

すると5分後くらいにまた携帯が鳴って見るとまた原口さんからで

【ごめん、さっきの間違えた。俺も今年初の花火だったしテンションあがった。また機会があったらよろしく。】

このメールを見たときはなんかメール間違って焦った原口さんの姿が思い浮かんでちょっと笑えた。

機会があったらだなんて・・・。

機会・・なんかありますよ~にっ!!!!



そして理沙ちゃんが下からわたしを呼ぶ声がした。

あまりに大声だったのでなにかと思って下に行くと拓海とその弟の陽司が来ていた。

陽司はわたしの1こ下で近くの男子校に通っている。

『おー久々。』

テーブルの上にあるマンゴーに目がいきそれに気付いた拓海が

『陽司の沖縄土産。』


陽司のやつ、生意気に沖縄なんて行きやがって。

でもマンゴーを買ってきてくれたので笑顔で3人でお礼を言った。

後々聞いたけど、理沙ちゃんも知香ちゃんも同じことを思っていたらしい。

そしてそのマンゴーを知香ちゃんが切ってくれたのでその夜みんなで食べた。

すごく甘くジューシーなマンゴーだった。


拓海は足のケガも治り、順調にエースぶりを発揮してサッカーを頑張っているらしい。

でも彼女にフラれたらしく、理沙ちゃんと知香ちゃんに励まされていた。

わたしはその姿を見て

『情けなー。早く立ち直りなよー。』

と冷たく言い放っていた。
部屋に入るとまた携帯が光っていた。

メールは俊くんからだった。

あのファミレス以来、わたしと俊くん、まぁ恵介くんもだけど結構頻繁にメールとかしていた。

会ったのはファミレスが最後だったので今日は久々に顔を見た。



【もしかして今日の人が好きな人じゃない?いい感じそうだったじゃん。】


今更ほんとは好きな人はいないなんていえないし、恵介くんに前に原口さんのことだって言ってもいるのでわたしは


【お疲れ様。そうだよ。あの人がすきな人。】


これ以上メールをしたくなかったし終わらせたかったので簡潔にメールを返した。


あんな嘘、つくんじゃなかった。

改めて嘘はつくものじゃないと反省した。

だんだんと20日の日が近づいてきた。

今日は18日。


友美と水着などを買いに行く約束をしていたのでお昼に街に集合した。

日差しがすごく強くてわたしは日焼け止めを腕にも首にも、もちろん顔にも塗りまくった。


待ち合わせ場所のスタバ前に着くと友美は暑かったからとか言ってスタバの中で涼しげにキャラメルフラペチーノを飲んでいた。

わたしはそこまで甘いものが得意じゃないのでキャラメルフラペチーノを見るだけで吐きそうだった。


そして念願の水着を買いに行った。

水着売り場はもうちょっとしたセールになっていてほんのちょっとだけど安くなっていた。

わたしは赤地に白水玉のビキニと紫地にゴールドフリルのついたビキニで最後まで迷って、紫のフリルのやつに決めた。


試着したときに友美が見て

『咲貴ってなんでも似合うからいいよね…スタイルよすぎ!!!』

とすごくでっかい声で言ったのですごい注目を浴びて恥ずかしかった。

声がでかすぎるんだよっ!!!

友美は黒と白のチェックで白のスカート付きのを買っていた。

友美はかわいいのでキュート系のこの水着はお世辞抜きに似合っていた。

いいなぁ。



そして他にも洋服とか見たり久々にキャーキャーと買い物をした。

そして意外だったのが、あれからずっと友美は恵介くんと連絡を取り合っているということだった。



あんだけ恵介くんがボロクソ言ってたのに恵介くんは何考えてるんだろう・・。



そう思ったが友美には言えるわけがなく軽く返事をしただけにしておいた。


簡単に傷つけたりしやがったら・・わたしが許さないんだから!!
そしてついに20日がやって来た。

待ち合わせ場所は友美の家の近くの駅。

天気は快晴。

暑すぎるくらい。

今日ももちろん日焼け止めを塗りまくってる!!



友美はもちろん恵介くんのほうに乗ろうとしたが、

『グーとパーで別れて。』

と恵介くんが言った。

友美は不満そうだったが2人でグーとパーで別れてわたしはパーで友美はグーになった。

そして俊くんが

『俺、グー。』

と言った。

だが、友美は動く気配がなかった。


あぁ、そういうことか。

友美の考えに気付いて

『わたしもグー。』

そう言って俊くんのところへわたしは歩いた。

そして友美は恵介くんのところに行き、嬉しそうに話していた。


荷物があまり入らなかったのでわたしも友美も必死で荷物を持ち抱えてバイクに乗った。



そして1時間半ほどしたら別荘に着いた。

荷物が邪魔で結構しんどかったけど無事に着くとしんどいなんて言葉はすぐに吹っ飛んだ。


恵介くんの言う通り外見はすごく綺麗で場違いじゃないかと思うほどだった。

そこは人気のある砂浜の近くでクラゲもまだいないという砂浜。

徒歩3分ほどで砂浜に行けるなんてすごく嬉しかった。

別荘の中はというと、トイレもお風呂もあって大きいリビングに2階はロフトの作りになっていた。

テレビも冷蔵庫もキッチンもあって綺麗だし、最高の別荘だった。



わたしたちはテンションは最高に上がり、荷物を置いて着替え、早速海に出かけた。

わたしたちが着替えている間、俊くんと恵介くんで夕食に作るカレーの材料やお酒を買いに行ってくれた。

そのとき、友美が恵介くんに今日告白すると宣言した。
着替えるとわたしたちは男の子2人を待った。

告白の段取りも聞きながら。


『夜、散歩に誘い出して言うから!!!』


大丈夫か??あれだけボロクソ言ってたのに。

不安だったけど止めるわけにはいかないから頑張れと背中を押すことにした。


20分ほどしたら2人が帰ってきたのでわたしたちは鍵を任せて友美と別荘に置いてあった大きい浮き輪を持って海岸へ出かけた。


砂浜は太陽の光を浴びてすごく砂が暑くなっていた。

ビーチサンダルを脱ぎ捨て、わたしと友美は海の中へ走りこんで入った。

『冷たっ!!』

入ったときはすごく冷たかった。

そんなわたしに友美が海水をかけてきた。

わたしも負けじと友美に海水をかけた。

周りから見たらかなりはしゃいでる2人組みだったと思う。


そしてゆっくりと沖に進んだ。

足がつかなくなると浮き輪がぷかぷかと浮いてくれたのでかなり助かった。

わたしたちはもう冷たいという感覚はなくなって漂流していた。

日差しが強かったが顔から下は水の中だったので気持ちよかった。


やっぱ・・海いいなぁ。


そんなとき突然浮き輪が沈んだ。

わたしも海の中に沈んだので慌てて上へはいあがるとそこには浮き輪に捕まった恵介くんがいた。

笑いながら

『ビックリしたっしょ??』

と言うのでわたしは少し怒った感じで

『まじビビったし!!』

と言った。

ちょっと海岸のほうに俊くんがいて、こっちに向かって泳いできていた。

わたし的には


恵介くんは友美のほうに行ってほしいのに。


と思ったが俊くんが友美のほうの浮き輪に捕まった。
わたしたちはずっと水中をウロウロしたり、わたしと友美が浮き輪の中に入ったままで、恵介くんがわたしの浮き輪に捕まり、俊くんが友美の浮き輪に捕まり、バタ足でどっちが早く目的地まで辿り着くか競争したりして遊んだ。

ほとんど裸同然でわたしは恵介くんと密着していたがドキドキなんて微塵もしなかった。

原口さんとは歩くだけでもドキドキしたのにこの違いに少しウケた。


でも俊くんとだったんならしたのだろうな。



途中でわたしと友美は疲れたので海岸にあがった。

2人はやっと手に入れた浮き輪でぷかぷかと遊んでいた。



『恵介くん、わたしの近くに来ないし・・。どうも思ってないんだろうね。メールとかも全部わたしから入れないと来ないし・・。』



わたしが恵介くんや俊くんとメールするときは全部向こうからきたときだった。

友美もそうだと思ってたのでこの話を聞いたときは驚いた。

そして絶対ことことは言わないでおこうと思った。


『やっぱりダメかな・・。』

苦笑いしながら友美が言った。

『わかんないよ。やってみなきゃ!!』

そう励ましたが友美の表情は暗かった。

でも・・正直ダメじゃないかとは思ってた。



『2人~??』

突然男の声がした。

ナンパだった。

ここは人気のあるビーチ。

女2人で座っているわたしたちはナンパ待ちだと思われたのだろう。

わたしも友美も無視していたら男3人がわたしたちの前に座った。

『ちょっと、2人ともまじかわいいし!!!何してんの!?ちょっと話そうよ。』

馴れ慣れしく話しかけてくる。

『友達と来てるから。男の子。』

友美が強い口調で冷たい表情をしながら言った。


偉い!よく言った。


そう思ってると目の前の男が足元の砂で山を作りながら

『いいじゃん、そいつらが来るまででも。ちょ、番号教えてよ。2人はどこから来てるの?』

全然引く様子はなかった。
そんなとき、わたしの後ろから誰かが抱きついた。

誰!?


わたしがビックリして振り向くとそこにはすごいタイプの顔があった。

それは俊くんだった。

『知り合いじゃないよね?』

すっごい顔と顔が近い距離で言われてわたしは心臓が張り裂けるくらいドキドキした。

息がかかる・・

そう思いながらもそれを悟られないように真顔で

『知らない人。』

と一言言い放った。


すると男ら3人は何も言わず気まずかったのかどこかへ消えた。

すると俊くんはわたしから離れた。

友美のそばにはいつの間にか恵介くんもいて

『友美も咲貴ちゃんもかわいいから2人でいたらすぐナンパあっちゃうよ?俊みたいないい男が行けば男らも”負けた”って退散するけどね。』

と優しく笑いながら友美に言っていた。

『えー、恵介くんもかっこいいじゃーん!!』

黄色い声で友美はボディタッチをしながら恵介くんに言った。


そんな2人を尻目にわたしは1人で海の方に行った。

顔が絶対赤かったから見られたくなかった。



まだ、誰にも気付かれてないはず!!


そう思って1人でスタスタと歩いた。

でも、後ろから手を引かれた。

振り向くと俊くんが言った。

『危ないって今言ったじゃん!!あれ??咲貴ちゃん日焼けしてるねー!!赤くなってるよ。』

そう言って顔を近づけ、わたしの顔を手で撫でた。

顔と顔がすごくまた近い。

キス、されるみたい。



こんな考えを一瞬してしまったためまた赤くなってきてしまった。

『うん、だから濡らそうと思って。』

意味のわからない回答をして海に行くということを遠まわしに告げた。

すると俊くんは友美たちの方へ走って行った。

わたしは構わず海の中に入って腰くらいの水位のところで1人ポツンと考え事をした。


やばい、ほんとにビビった!!

まじかっこいい!!

てか、あの人だ、錦戸亮だっけ?

似てる!!

どうしよう、今日ずっとこんな調子が続くのかな・・



そんなことを考えていたらいきなり頭から浮き輪をかぶった。

浮き輪はスルリとわたしの体を通って水面にパシャッという音をたてて落ちた。

後ろを見るとまた俊くんがいた。

『さっきは一緒に泳がなかったから次は一緒に泳ごう。』

そう言って浮き輪を押してきた。

わたしはまた心臓の鼓動が早くなってきていることに気付いた。

やっぱり俊くんだったらドキドキしちゃうんだ。

あんな冷たい態度取られたり、好きな人いるって知ったのに。



『さっきは、ありがと。』

今更だけどさっきのお礼を言った。

『咲貴ちゃん、だめだよ。自覚しなきゃ。咲貴ちゃんね、このビーチで1番目立ってると思うよ。』

この言葉にわたしは意味がわからなかった。



何が?水着?そんな派手?確かにゴールドついてるけど・・



『え?水着?』

わたしは聞いてみた。

『いやいや━━…。あの咲貴ちゃん綺麗じゃん?だからみんな振り返って見てるって気付いてる??』

わたしはそういう意味だとは全く思わなかった。

『気付いてない━…。てか嘘だ!!』

『この前の祭だって咲貴ちゃんが綺麗だから目立ってて俺ら気付いたんだけど。』

自覚しろといってもそんな自惚れ的なこと自覚することはわたしにはできなかった。

愛のかたち

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