『俊、いつからいたんだ??』


わたしだけが俊のいる方角を向いて座っているのに全く気付かなかった。

それだけ・・・話に落胆していたんだ。



『俊には結婚してほしい方がいる。から聞いてた。その話も東京も初耳だし、俺は絶対行かない。そしてそんな知らない奴とも結婚はしない。』


そう言いながらこっちへ歩いてきてわたしの横に座った。


『この前も言ったけど、咲貴と一緒にいれないんだったら勘当してもらっても構わない。跡継ぎは晃がいるだろ?俺は大学にも行かないし、言うことも聞かない。』


そう言うと立ち上がってわたしの手を引いた。


そのままお父さんやお母さんの制止の声も聞かずに玄関に向かった。



『俊、後悔するのはお前なんだぞ??』


『知るか。ほっとけ。』


そう言ってそのまま玄関を出た。


そして原付で来たのに俊の車のとこまで引っ張られていく。


『待って。てか、ここにいるのが何でわかったの??』


そう言うと俊の動きが止まった。

わたしのほうを振り向き


『咲貴、ごめんな。きついこと色々言われて。気にすんなよ。何でわかったかは晃って弟がいたろ?あいつが教えてくれたんだ。メール届いて驚いてすぐ早退してきちゃったじゃねーか・・・。』


『そうなんだ。ごめんね、勝手なことして。ただご両親にお金で動くような仲じゃないってちゃんと言いたかったの。』


下を向いてわたしは言った。

勝手なことして申し訳ない。


『俺は嬉しかったよ。』


そう言うとまたわたしに背を向けて歩き始めた。


『咲貴の心からの本音を知れたし。ありがとな。』


そう言うと車の鍵をキーレスで開けた。
『俊、わたしバイクで来てるんだ・・・。』


『はぁ!?まじかよ・・・お前車の免許はないもんな。じゃあ気をつけて帰ってこいよ?』


そう言うとまた車の鍵を閉めわたしをバイクのところまで送ってくれた。



バイクで運転中、夕方になるとさっきの日差しが嘘みたいに思えるくらい涼しくなった。

やっぱり秋の到来を感じた。


途中、スーパーで買い物をして帰るとやっぱり家に先に俊は着いていた。




『ただいま。』


玄関を開けるとそこにはさっき別れたはずのお父さんとお母さんの姿が。


なんで・・・???



『咲貴、ちょっとおいで。』


俊がわたしをチラッと見て呼んだ。


買い物をしたものを床に置き、わたしは横にチョコンと座った。



『お前たちの本音はわかった。お前たちが帰った後、母さんと話して交際は認めることにした。だけど大学には行ってもらう。この地元でも構わないからちゃんと大学を4年卒業しなさい。それが付き合いを認める条件だ。咲貴さんは悪い子でもないし、しっかりもしている。大切にしてあげなさい。』



これだけ言うとお父さんは立ち上がり、それに連なってお母さんも立ち上がった。


『父さん、大学行きたくないんだけど。』


『大学に行けばここの家賃と生活費を振り込む。不自由しないくらいのな。学費も出すから行きなさい。そうすれば他は何も言わない。』


『・・・考えとくよ。』


俊の答えはきっと決まってると思う。

ただすぐに従うと言いたくなかったんだよね。


お父さんもそれに気付いてたのかな。

フッと笑うような仕草を見せて帰って行った。



わたしは帰った後、俊に抱きついた。

認めてもらったことが嬉しくって。


『俊、よかった!!わたしたちのこと誰も反対しないよ!!』


そこで初めて親も反対はしないだろうということを告げた。

俊は早く言えと怒ったけど表情は嬉しそうだった。




これでわたしたちの未来は開いた。
『俊、送れちゃうって~!!!!!』


『ちょ・・待てって。ネクタイ・・あぁ~もう後でいいや!!』



ネクタイを手に取り、俊はわたしのいる玄関のほうに着た。

そしてわたしを見て


『うん、キレイキレイ。』


そう言って靴を履いた。



今日は3月14日のホワイトデー。

この日、理沙ちゃんと純くんが結婚する。



今、わたしは23歳、俊は24歳になった。

俊はもうすぐやっと大学を卒業する。

わたしは短大を出た後、俊のお父さんの会社で働くことになった。


俊のお父さんは韓国に支店のある広告代理店の社長だった。


わたしはそこの本店である日本で事務職についている。

俊ももちろん卒業後はこの会社に来る。

最初は営業をして実績を積んでいくという話。


━━『誓います。』


理沙ちゃんと純くんの声がチャペルに響く。

そう、この日、理沙ちゃんと純くんは式を挙げた。



お腹の中にはすでに新しい命が宿ってる。

純くんが言うには計画的犯行らしい。

ニヤけながら喋ってきたんだもん。

ちゃっかりしてるな。


お母さんは既に号泣。

純くんのお母さんだって。

知香ちゃんはカメラマンかのように写真を撮りまくってる。

専門の人がいるのに・・・。


わたしは俊と並んで見ていた。

綺麗な理沙ちゃんとかっこいい純くんの姿を。


心から言える。おめでとう。




フラワーシャワーとクラッカーを鐘を2人が鳴らしたあとに投げた。

白い階段を降りる2人。

天気は快晴で天気まで2人を祝福してるみたい。



親族で写真を撮った。

その中には俊もちゃっかり入ってる。


そう、俊とわたしは婚約した。

両方の親とも結婚はいつするの??

とせかしてくるくらい。


わたしたちを反対してた人はいっぱいいたのに、今は誰1人としていない。


いるとしたら俊に想いを寄せている大学の人やわたしに思いを寄せてる職場の人くらい?


でもそんなのは全く関係ない。
『せーのっ!!』


理沙ちゃんはそう大声で言って後ろを向いてブーケを投げた。


大きく投げすぎて誰もいないところへ飛んで行ってる・・・。


でもちょうどそこに居たのは知香ちゃんだった。

ナイスキャッチで受け取りみんなに拍手されていた。

わたしは密かに思った。


計画的だな・・・。



『なぁ、あれ絶対知香ちゃんが理沙ちゃんに命令してたっぽくない??』


横でコソッと俊も言った。

誰もが思うだろうな。

うちの親2人なんて目に手を当てて呆れてるし・・・。




その後、披露宴を挙げ、2人の立派な旅立ちの日を見ることができた。


きっと・・・わたしも近いうちに。



『なぁ、咲貴・・俺絶対に幸せにするよ。結婚して?』







『嫌。』









『・・・っ。一生独身でいろ!!』







『嫌。』






『じゃあ俺と結婚してよ。』








『・・・・いいよ。』
これがわたしたちのプロポーズの言葉。


嫌って言ったのはもちろん照れ隠し。

わたしたちにムードなんてもうほとんどないんだもん。

いつもそばにいるのが当たり前。


俊はわたしにとって絶対的なもの。

わたしは俊にとって絶対的なもの。


どちらかが欠けるときっと両方とも崩れるんだ。


簡単に言うとカレーにカレー粉が入ってないみたいになっちゃう。



2人でやっと1つになれる。

そういう人、見つけれて本当によかった。
『ねぇ、俊。』




『何??』




『わたしたちが出会ったのって偶然?運命??』




『偶然だろうね。俺があの時あの合コンに行かなきゃ出会えなかったもん。』




『じゃあ運命って何??』




『偶然を運命にするんだよ。俺たちはそれが出来た人間。』




『じゃあ偶然と運命って紙一重なんだね。』




『そうだな。でもそれが出来るって難しいと思うよ?』