『俊!!どうにかするって嘘でもいいよ!!一生のお願い!!言ってよ!!そんなこと関係ないって言ってよ!!わたしは気にしないよ。俊がいればいいよ。どうして・・言ってくれないの?どうしてこっち見ないの??』

俊は涙を流しながら訴えるわたしを決して見なかった。

右の斜め下、何もないのに目線を逸らしていた。


でも・・わたしの掴んでいた手を掴み、下におろした。

そしてさっきまでの睨んでる目じゃない。

優しい目、違う。

悲しい目をしてわたしの手を掴んだまま口を開いた。

『咲貴・・やっぱり・・・好きなだけじゃいけない。こうやって反対されるんだ。原口さんは間違ってないよ。そうだ。原口さんの言うとおりだ。後からきっと咲貴は・・傷つく。ごめん、俺のせいだ。手出さなければ今もまだ・・原口さんとうまくいってたかもしれない。俺のせいだ。ごめん・・・。』


そうして手を離した。


『咲貴・・別れよう。今別れなきゃもうこれ以上のタイミングはないよ。』

『タイミング?!そんなの必要なの!?意味わかんない!!嫌だ、絶対嫌だ!!わたしは俊がいなきゃ・・・』


パンッ!


わたしは・・・俊に平手で殴られた。

涙も一緒に右に飛んだ。


後ろから孝浩くんがわたしの肩を掴んでかばうように前に出てくれた。

痛いから動けない。


心が。


どうして殴られたの??

ねぇ、俊。


わたしたち・・・どうしてダメなの???


『咲貴、いい加減にしてくれ。これ以上手をあげたくない。暴力が嫌いなお前には手をあげないと・・・こうしないと嫌ってくれないだろ・・・。』


俊が言葉に詰まってる。

泣いてるの??


泣いてるんだね??


俊だって・・別れたくないんだね??
『原口さん、すみませんでした。少しだけ・・・夢見させてもらいました。』


『なぁ、矢野さんは・・・どういう関係??』


愛子ちゃんのことだ。

わたしも・・・気になってた。


『愛子は日本人ですよ。俺の国籍のことも全部知ってます。あいつは住んでいる家の親戚、俺とはなんのつながりもない奴です。あいつまでそういう目で見ないでください。』


『そっか。いや、そういう目では見てないけど気になっただけ。』


『咲貴、ごめん。痛かっただろ?俺バイトには明日から行かないから。俺の事はもう忘れて。原口さんがきっと忘れさせてくれる。』


そう言ってわたしの髪に触れた。


『俊、嫌だよ。嫌だよ。わたし忘れることなんて・・・出来ない。』


触っている俊の手にわたしは触れた。


冷たい、まるで氷のよう。


『咲貴、よく考えろ。俺たち、うまくいかないんだ。俺はきっと韓国籍の人とじゃないと親には紹介なんて出来ない。咲貴の親は俺を紹介したときに日本人だと思い込む。国籍って関係ないなんてないんだ。大きな・・問題なんだ。俺が我儘だったばかりに咲貴に辛い想いさせてしまって・・ごめん。もう俺はお前のことを忘れる。キレイさっぱり忘れる。これ以上会いたくない。』


だめ・・何か言わなきゃ俊は去っていく。

でも・・・体が口が動かない。

会いたくないって言われたこと、忘れると言われたことがショックで。


『元気で。原口さんも、気付かせてくれてありがとうございました。あとはよろしくお願いします。』


そう言って深く頭を下げた。

頭を・・なかなかあげない俊。


わたしは俊のところに走ろうとした。

でも・・孝浩くんに止められる。

抵抗しながら


『離して!!俊、泣いてるんでしょ?ねぇ、別れたくないんでしょ?じゃあどこかに逃げようよ、2人で!!離れてなんていられ・・ない・・・。』

最後のほうは涙でうまく言えなかった。

それでも俊はまだ頭を下げたまま動かない。

そしてバッと頭を上げ、後ろを向いてバイクに走った。

そして・・メットもせずにバイクで走り去った。


わたしはずっと俊の名前を叫んでた。





俊、どうして?

好きになっちゃいけない人なんているの??

人類みな同じじゃないの??

大きな問題なんかじゃないと思うよ。

だって、心は繋がってるんだもん。


反対されたって何が起きたって・・



わたしは俊のそばにいたいのに。


わたしたちの壁は見えないよ、わたしには。
わたしは新垣咲貴、17歳。

明日2月2日で、18歳になります。

もうすぐ卒業です。


バイトはしていません。

学校にも最近は行っていません。

進路の短大が決まって安心したから。

家にもほとんど帰っていません。

でも、居場所は言っているので大丈夫。

わたしはある人の家にいます。


2こ上の男性、原口孝浩という人のところに。




わたしは毎日、ある人を探しています。

もう1年ちょっと見ていません。


知りませんか?

かっこいい顔をしてます。

錦戸亮って知ってる?

あの人に似てるの。


尾上俊っていう・・韓国籍の人。
『ねぇ、孝浩くん。』


『何?』


『運命って何??』


『んなもんはない。あるのは過去、現在、未来。それだけ。』


『そっか。じゃあ今が現在か。未来、未来、今言葉を出せば出すほど未来だよね。わたしは近い未来に原口孝浩にキスをします。』


わたしは軽くキスをした。


『わたし、予言者??』


『ついにぶっ壊れたか・・・。』


笑いながらわたしの頭を掴んで孝浩くんが振る。


『壊れてないよ!!もー目まわるってー!!』


そう言って孝浩くんの手を掴んで離した。



わたしたちの関係、恋人らしい。

ただ間違いないことは孝浩くんがわたしを守ってくれているということ。

あの、胸が押し潰れるように辛かった別れの後、わたしは地獄に堕ちたような感じだった。

そんなわたしの手を引いてくれたのは、この人、孝浩くん。

わたしはまだ俊のことが好きってわかってるのにそばにいる。


あの後、俊の行方はわからなくなった。

俊くんの家に行き、家族の帰りを待った。


夜中に帰ってきたお姉さん(義理だろうけど)に聞いたら


『そういえば、最近見ないかも。』


関心のない一言だった。

そのときに初めて表札を見たけど本当に【中本】と書いてあった。

意外と気付かないものなんだよね。


高校にも行ってなかったらしい。

合格した専門学校にも行ってないらしい。


バイトは辞めた。


村松さんがあることないことオーナーに言いふらしたから。

カプリの株を下げる店員だって言ったらしい。


オーナーは信じてなかったけど村松さんがあまりにもひどく、わたしの服とかも切り刻んだりした。

耐え切れずわたしはオーナーに話した。

村松さんを辞めさせるとオーナーは言ったけどわたしは俊と少しでも思い出のあるこの店を立ち去ることにした。

俊がいないから無意味なの。


村松さんにいじめられた理由?

決まってる。

孝浩くんがわたしのことが好きだと村松さんに言ったから。


村松さんと一緒にいさせたくなかったんだろうね。

多分、どちらかがすぐに店を辞めることになるって孝浩くんはわかってたんだ。


ずる賢いね。
『ねぇ、孝浩くん。』


『何?』


『わたしのこと、好き?』


『言わなきゃダメ??』


そして孝浩くんの顔が近くなる。

唇が・・わたしの唇にあたった。


『いいよ、言わなくても。』


『じゃあ聞くな。お前、さっきから質問おかしいぞ。やっぱ壊れたな。』


そう言って髪を触った。


わたしの今の髪の色は金髪。

目立つ色。


目立つために金髪にした。

誰かに気付いて欲しくて。


すれ違ったとき、気付いて欲しくて。




俊がわたしに目がいったとき、気付いて欲しくて。


わたしの想いは止まらなかった。

孝浩くんは前に”忘れたと思ったけど姿見たら想いが戻った”って言ってた。



わたしは姿見てなくても想いは変わらないよ。


待ってるんじゃないの。

忘れられないだけなの。



しつこい女だって孝浩くんは言うけど・・・どうしようもないんだ。


俊が好きだから。
『咲貴、俺の事好き??』


『うん、好きだよ。』


うん、孝浩くんのこと好きだよ。

大切な人だって思ってる。


一緒にいて落ち着くし、わたしを大切にしてくれる。

俊のこと忘れてないのを知っててもわたしを責めたりなんてしない。


精神安定剤的なものは孝浩くんなんだ。


『明日、どこ行きたい?誕生日。』


『ここがいい。孝浩くんと一緒にこの家で祝ってほしい。』


『金のかからない女だな。我儘の使い方知らないだろ、お前。』


笑ってるけどわたし、我儘すごい使ってるよ?

孝浩くんだって知ってるくせに。


『そのお金はちゃんと未来のために貯めといてよ。』


『そうだな。じゃあせめていいもの食べようか。咲貴の料理もだいぶ食べれるようになってきたけど誕生日くらいおいしいものを・・』


パコッ!!


わたしは孝浩くんの頭を叩いた。

失礼な。

料理は苦手なのに頑張ってるんだから!!!


『もうそんなこと言う人は食べなくてよろしい!!』


『うそうそ!!おいしいって、咲貴の料理。』


『調子よすぎー!!』


そんなわたしの頭を撫でる孝浩くん。


『ちゃんとお祝しような。』


すごく優しい顔。


『うん。ありがとう。』


孝浩くんがいてくれて



本当に救われる。
それからわたしたちは街に出た。


プレゼントを買ってもらいに。

もちろん渡されるのは明日なんだけどね。


平日だというのに田舎のくせに意外と人が多い。

もう、キョロキョロを探すのはやめる。


孝浩くんを傷つけたくないんだもん。

わたしが俊のこと考える度にきっと傷ついてるよね。

また孝浩くんを裏切るようなことをすればきっと自分を許せなくなる。


『すみません、WWW!という雑誌をご存知ですか??』

WWW!と言えば地元の有名雑誌。

いきなり知らない女の人から話しかけられた。


『ええ、知ってますけど。』


『来月号で素敵なカップルという特集を組むんですけど、お2人本当にお似合いでぜひ写真撮らせてほしいんですけど。』


営業スマイル全開でその女の人は言った。

きっと歳はまだ30歳はいってないだろう、ピンクのメッシュの髪が似合っていた。


『どうする??』


『孝浩くんがいいならわたしはいいよ。』


『じゃあ、いいですよ。』


そういうことでわたしたちは写真を撮られた。


こういうときってちょっと後悔する。

もっといい服あるのに!!

メイク直ししとけばよかった!!


とかね。


わたしたちは10枚ほど撮られた。

見合って笑いあってる写真とか、普通にしている写真とか。


全て手は繋いだままで。