『そのいい男の顔どのくらいなんだろう?』
友美はその男たちを見たいというかのように言った。
いい男っつっても孝浩くんには絶対敵わないだろうなっ。
自分の彼氏をここまでいい男だと思えるなんて幸せだなー、わたし。
孝浩くんはわたしのほんっとに自慢の彼氏なんだ。
『通るときチラッと見ればいいじゃん。』
そう言って運動部が汗を流しながらがんばっているのを尻目に校門に向かって歩いた。
校門では女の子数人がそのいい男だろう、集団になってキャーキャーとぶりっこな声を出しながらはしゃいでいるのが聞こえていた。
『あれっぽいね。囲まれてて全然見えないじゃん。』
わたしが言ったとき、後ろから小走りで唯たちが走って行った。
そしてタイミングよく男の子たちに群がっていた女の子たちはフラれたらしく立ち去っていくのが見えた。
そこにすかさず唯たちが話しかけていた。
『唯たち張り切ってんねー。』
友美がニヤけながら言っていた。
そのときに大声で唯が
『咲貴ー!!!』
と叫んだ。
あまりの大声だったのでつられて大声で返事をした。
『何~??』
そう言いながらもわたしはゆっくり友美と歩いて唯たちのほうに行った。
近づくと男たちの顔が見えて誰かというのがわかった。
紛れもなく俊くんと恵介くん、そして見たことのない人だった。
その人も2人に負けず劣らずいい男だった。
確かにいい男なのでみんなが騒いでいた理由もわかる。
わたしは俊くんらを見て驚いた顔を隠せなかっただろうと思う。
なぜここに??
『この人たち、咲貴を待ってるって。』
唯が明るい声で笑いながら言った。
わたしたちにも紹介しろと言っているのだとすぐに悟った。
『久しぶりだね。』
わたしは俊くんに話しかけた。
あの電話以来。
しかもあの内容。
正直、もう会いたくなかった。
『咲貴ちゃん、連絡しても絶対出ないから来ちゃったよ。』
ちょっと怒った感じで俊くんが言った。
『咲貴ちゃん、髪の色変えた??』
髪の色なんて変えてもないのに恵介くんが俊くんの後にすぐ言った。
『咲貴は彼氏できたから連絡しなかったんじゃない?』
唯が俊くんを見ながら言った。
俊くんはそれを無視して
『咲貴ちゃん、俺諦める気ないから。それ言いたかっただけ。』
わたしは何か言うタイミングもなく、そう言って恵介くんとあと1人の友だちに行こう。と行って去ろうとした。
『俊くん、咲貴は彼氏一筋だから無理だよ。』
友美が厳しい口調で言い放った。
友美は恵介くんが気まずいだろうにわたしの代弁をしてくれた。
恵介くんは振り返ったが、俊くんは振り向きもせずその言葉も無視して立ち去っていった。
『今のって・・・宣戦布告??』
友美がわたしに呟くように言った。
唯はわたしに
『ちょっと!!どういうこと!?彼氏いるのにあんないい男を!!』
そう言っていた。
俊くん、前にいとこに見せ付けるためにわたしに告ったって言ったじゃん。
どういうこと??
頭はパンク寸前だった。
唯にはただの友達だと言ってわたしは友美と校門を離れた。
もっとも唯はその言葉を全く信用してなかったと思うけど。
てか意味わかんない!!
まじであの男は謎!!!
わたしたちはカラオケの予定を変更して語れるように近くにあるオープンカフェに向かった。
外には座らず、涼しい店の中のソファーのある丸い席に座り、メニューを見た。
わたしたちはそれぞれ、スイーツと紅茶を頼んだ。
友美とわたしは趣味が合って、できればコーヒーより紅茶派。
『俊くん、どうしちゃったの??』
友美が紅茶をすすりながら不思議そうに言った。
『メールとかは来てたけど返事しなかったんだよね。』
わたしはフォークでケーキを割りながら言って割ったケーキを口に運んだ。
友美に連絡が来ていたということは言っていなかった。
というより、連絡といってもたまに【なにしてる?】とか【今暇?】とか短文のメールがたまに来ていただけだ。
バイトで忙しかったりもしたので返事するタイミングがなかった。
カフェで連絡は今までどおり取らないということを決めてわたしたちは帰宅した。
家に帰ってゴロゴロしているとバイトの終わった孝浩くんから電話が来た。
『明日新人さん来るんだって。』
その言葉にわたしは喜んだ。
やっと週6のバイトから逃れられる・・・・。
孝浩くんもかなり喜んでいた。
その日、会いたいと言われたがわたしは帰ってすぐに化粧を落とすため、スッピンだったから断った。
本当はわたしも会いたかったけどスッピンはまだ見せたくないし。
毎日バイトで会うから1日会わないと変な感じがした。
翌日、学校が終わるとバイト先へ行った。
今日は新人さんの来る日。
嬉しい気持ちを抑え切れなかった。
今の現状は孝浩くんと4つ上の無口な坂上さん(男)と3人で5時~10時をやっている状態。
お昼はまた違う人がいるが、5時~10時の5時間を全員週6の出勤。
たまにバイト2人と店長の3人でまわしているかなりハードな状態だった。
5時前に行き、カウンターに入るとすでに孝浩くんは来ていた。
今日は坂上さんがお休みの日。
軽く話してわたしはたまっている返却をしに売り場へ移動した。
すると職員出入り口のところから店長とすごく綺麗な女の人が出てきた。
あの人が新人さんかも。
そう思ったが返却商品があまりにあったので返却を急いだ。
パートのおばさんたち、返却しとけって。
イラつきながらこなしていた。
何度か返却を繰り返した後カウンターに戻ろうと歩いていると、孝浩くんが新人さんにレジのやり方を教えていた。
近くで見ると驚くほど綺麗な人だった。
細くて、薄化粧なのに華があって、髪の毛も痛んでいない。
外見は完璧だった。
それと同時に孝浩くんがもしこの新人さんを好きになったらとか想像してしまってわたしは怖くなった。
美人すぎる・・・。
カウンターに入ると孝浩くんがすぐにわたしと新人さんに紹介してくれた。
『矢野さん。歳は俺とタメ。こっちは新垣さん。2こ下の高校2年。』
そのときに初めて矢野さんと目が合った。
矢野さんは目力もあってその美貌にわたしは惹きつけられてしまった。
『新垣さん、よろしくね。』
矢野さんは笑って言った。
『よろしくお願いします。入ってくれてありがとうございます。』
感謝を告げ、わたしは負けじと笑い返して言った。
それからはレジや返却の置き場、報告の仕方など簡単なことをわたしが教えた。
店長がわたしが女同士で教えやすいだろうからと言って教育係に使命してくれたから。
こんな美人な人と孝浩くんを一緒にしていたらわたしが気になってしまうと店長が思ったからかもしれないけど。
店長には付き合っていることは言わなくてもバレてしまっていた。
何も言われないけど。
矢野さんはすぐに仕事を覚えた。
話もおもしろくて、明るい人だった。
そして彼氏がいるということを聞いてわたしはすごく安心した。
それと同時にわたしに彼氏がいるのかと聞かれ、恥ずかしそうにうつむきながら小さな声で
『原口さんなんです。』
と言うと矢野さんは笑いながら
『勘、当たった!!』
と嬉しそうに言った。
矢野さんはすごく素敵な人だった。
仕事もすぐ覚え、挨拶も完璧で、人当たりもいい。
わたしは矢野さんとすぐ仲良くなれた。
いい友達になれそう。
『新垣さん、大人っぽいから最初同じ歳くらいかと思ったよ。』
『矢野さん最初見たとき、わたしは一目惚れしました。』
そう言うと矢野さんは嫌な顔して
『女には興味ないから!!』
と冗談っぽく笑いながら言ったので違うし!と否定しながらわたしも笑った。
孝浩くんも矢野さんは仕事覚えるの早いし、頼りになりそうだねと言っていた。
バイトが終わり、ロッカーで着替えながら孝浩くんに送ってもらおうと考えていると
『新垣さん、これから暇??ちょっとお茶しない??』
矢野さんから突然お誘いを受けた。
断る理由もなかったし、わたしはいいですよ。と言ってお茶に行くことにした。
ロッカーを出ると孝浩くんが待っていたので矢野さんとお茶してくるということを伝えた。
帰ったら連絡しろよ。という言葉をもらってわたしたちは近くのファミレスへ向かった。
大きな満月に照らされながら並んで歩き、いろんなことを話した。
『めっちゃラブラブじゃない??原口くんとはもう長いの??』
『今1ヶ月ちょっとくらいです。』
『今が1番幸せな時期じゃーん!!』
と笑顔でニヤけながら矢野さんは言った。
逆に矢野さんは?と聞くと
『んー・・4ヶ月くらい?あんま変わらないね!!』
と言った。
ファミレスに入るとお腹のすいたわたしたちはお茶だけじゃなくゴハンも食べることにした。
ファミレスは10時過ぎだというのに何人もの客がいた。
わたしたちは禁煙席に座ってメニューを見た。
沢村さんと来た時、あの人はこの時間にハンバーグ食べてたなぁ。
と思い出していると矢野さんは
『わたしこのサラダっ。』
とメニューにあるサラダを指指して言った。
この言葉にわたしは同じ匂いを感じた。
『矢野さんもこの時間になると他のはこわくて食べられない系ですか??』
そう言いながらわたしは店員を呼んでサラダを2つ注文した。
『新垣さんも??やっぱりスタイル維持したいもんね!』
矢野さんも意思の強い人なんだろうと思った。
わたしは夜の8時以降は絶対に炭水化物を取らないようにしていた。
たぶん、矢野さんもそういう系なのだろう。
『新垣さんは名前何ていうの??』
『咲貴です。花が咲くの咲に貴族の貴。矢野さんは??』
『へー、なんかかっこいい!!わたしは愛子。愛する子ども。』
『その言い方なんかいいですね。』
こういうお互いの話をわたしたちはそれから2時間もしていた。
大学、高校、地元、趣味、好きなブランド、使っている化粧品、色々。
そしてわたしたちは咲貴、愛子ちゃんと呼び合う仲になった。
申し訳ないけど愛子ちゃんは沢村さんが辞めたからこそ入った。
沢村さん、辞めてくれてありがとうと思ったりもした。
絶対仲良くなれる。
この日からバイト生は4人になった。
前のだいぶ楽になるあの人数まであと1人。
愛子ちゃんに仕事覚えると忙しいということを言うと嫌そうな顔をしていた。
愛子ちゃんと別れた後、わたしは孝浩くんに電話した。
『孝浩くん?会いたいかも。』
『ハハッ。迎えに来てほしいだけだろ!今どこ??』
笑いながら言う孝浩くんに
『違うもん!!会いたいんだもん!!近くのファミレスにいるから来てくれる?』
そう言うと今から来ると言ってくれたので電話を切った。
わたしは外の木が植えてあるコーナーに座って待っていた。
愛子ちゃん、いい人でよかった。
誰かまた入らないかなー・・。
いい人がいいな。
こわい人はヤダな。
そんなことを考えながら空を見ると大きな月とたくさんの星たちが見えた。
ボーっと星の数を適当に数えていると前から孝浩くんが来て
『何やってんだ・・』
と笑いながら言った。
わたしはちょっと恥ずかしくなって首が痛かったのとか意味のわからないことを言ってすぐに立ち上がり、孝浩くんの横に行き腕を組んだ。
車に向かい中に乗ったとき
『愛子ちゃんね、すっごいいい人だよー。』
と孝浩くんに言った。
『愛子ちゃんて矢野さん?あぁ、いい人っぽいね、あの人は。』
『でも、惚れちゃいやだよ。』
『1人で手一杯です。』
そう言ってわたしの左肩に右手をまわし、キスをしてきた。
いつも孝浩くんのキスは突然。
不意を突かれていつもドキッとしてしまう。
唇が離れた後、
『そんな迷惑かけてないもん。』
ちょっと手一杯と言われたことに膨れた感じで言うと
『迷惑じゃなくて心配。変な男に絡まれてないかなとか。さっきもボーっと上向いてるし。危ないって。』
ちょっと怒った感じでそう言って車を走らせた。
わたしはちょっと嬉しがりながらも小さく
『はーい、気をつけます。』
呟いた。
孝浩くんは明日学校だからか、わたしの家に向かっていたので
『ね、寄ってかない??理沙ちゃんと知香ちゃんに紹介するよ。』
思いつきで言ってみると
『うん、じゃあ挨拶しとく。』
そう言うので純くんが家にきた時にいつも車を置いているところが空いていたので孝浩くんの車をそこに停めて家に向かった。
今日は珍しく純くんは来てないみたい。
案の定いつものように鍵はあいていて玄関からDVDエクササイズの音が家中に響いていた。
『きつーい!!』
『暑い!!!』
声が聞こえてるって・・・恥ずかしい。
リビングに行くと理沙ちゃんと知香ちゃんがを必死にやっていたのでまだ玄関らへんにいた孝浩くんに
『ちょっと・・・、待ってて・・・。』
恥ずかしそうに言ってリビングに入り
『ただいま。また鍵あいてたよ。』
いつも通り呆れたように言うと2人は一斉に振り向き
『おかえり。』
そう言ってDVDの中の教官と同じ動きをしていた。
『あの、孝浩くん来てるんだけど・・・。』
そう言うとさすが姉妹。
同じ動きで振り向きながら
『えっ!?』
と大声で言った。
急いでDVDを止めて
『咲貴、部屋から服とメイク道具持ってきて!!』
と理沙ちゃんが大きい声で言った。
わたしは笑いながらはいはい。と言ってリビングを出ると孝浩くんが笑っていたので一応リビングに顔だけ出して
『声、筒抜けみたいだから。』
そう言うと2人はそろって
『咲貴!連れてくるなら早めに連絡してよ!!』
とでかい声でまた言うから後ろで孝浩くんがまた噴き出して笑っていた。