わたしが彼と出会ったのは突然と偶然だった。



そして2人がどういうかたちになるのかは2人次第。



そしてうまくいけば運命と言う。


わたしは運命とかそういうのが好きだからすぐ信じてしまう。


こう考えてみると偶然と運命は紙一重なのかもしれない。



出会ってよかったのか、出会わなければよかったのか。

出会わなければどうなっていたのか。



それはわたしにも、きっと誰にもわからない。

でも出会えて幸せだとわたしは思う。
『浅田くん、新垣さん。申し訳ないけど名簿が1番だから学級委員、よろしくね。』

教壇から言う37歳の女の担任の言葉。

担任は長い髪の毛を後ろに束ね、白いスーツを身にまといニコニコして言った。



『は?まじで?』

驚いてついタメ口になってしまったし・・・。

わたしが学級委員ってなにそれ!?

てか浅田ってどいつ?



目線を横にずらすと隣にいるさえない男。

たぶんこいつだろうな。



担任はまだニコやかに

『よろしくね。はい拍手。』

とか言って拍手をクラス全員に要請して拍手されているわたし。


みんながチラチラと見てくる視線がウザイ。

なんでそんなめんどいこと・・

しかめっつらでわたしは担任を睨んでみた。


でも気付かず担任はどんどん話を進めていく。

今日は高校2年生のスタートの日。



クラス替えがあってわたしは新垣という苗字のせいで名簿が1番ということもあり学級委員というとてつもなくめんどくさそうなものに巻き込まれてしまった。

後ろの席の子なんて荒木だからあとちょっとでわたしは免れたのに。

どう考えてもわたしには不向きだよ。
HRが終わると前も同じクラスで今やすごく仲良しの友美がこっちに来た。

『咲貴、しょっぱなからめんどいことになっちゃったね。』

ニヤニヤしながら言う友美は絶対からかってるし。


友美はセーラー服の制服のスカートの裾はかなり短くて紺のハイソが似合っている。

『うるさいな。なんでわたしが。絶対不向きじゃない??』

わたしはどちらかといったら派手な感じで毎日学校に行くとも限らないしどう褒めても素行がいいとは言えない。

『いいじゃん、2-2の美人委員長。浅田とは美女と野獣だけどね。』


何言ってんだか、このバカ。

わたしは友美から目線をはずして自分のバッグを肩にかけた。



『帰ろう。お腹減っちゃったし何か食べてかない?』

そう言うと友美も乗り気でついてきた。

友美は高1のときも同じクラスで結構気が合う。

友だちは多いけど友美はまた特別。



『咲貴ちゃん、友美ちゃんバイバーイ』

帰りに前同じクラスだった子に会うたび言われ、玄関でもまた違う子に言われた。

それに笑顔で返し、仲を取り持っておく。



『どこよってく~??』

友美が横で傘を振り回しながら言った。

わたしも傘をひきずりながら歩いて

『んー、重ーく食べたい!!』

お腹もすいてていっぱい食べたい気分だった。


『じゃあ、サバイバー行こうか!!』

それでわたしたちはサバイバーに向かった。



サバイバーは結構メニューが多くて量も多くておいしいお手ごろなお店。

ファミレスのようなもの。

友美は自転車だからわたしは友美の後ろに乗って友美のとわたしの、2つの傘を持って出発した。

雨が降り出さないのを真剣に祈った。



ちょっと走ったところで友美が興奮した様子で

『咲貴、あそこ高山先輩発見!!』

高山先輩という彼は、部活に行こうとしているところだった。



彼はサッカー部のエースですごくかっこいいらしく学校で1番人気がある。

友美も彼のちょっとしたファンの1人。



でもわたしは実は高山先輩とは呼ばず、名前の拓海と呼んでいる。

拓海は実はわたしのいとこ。

『拓海ー!バイバーイ!!』

わたしは友美の後ろから2つの傘を振りながら拓海に叫んだ。

拓海は気付いて手を大きく振ってくれた。



『咲貴はいいなー。高山先輩と仲良しだし。』


運転しながら呟くような友美の声が聞こえた。



仲良しというかいとこなのに何を言うんだろう。

相変わらずぶっとんだこと言うなと思いながら

『いや、仲良しつーか血縁だから・・ね。』



でもほんとのところ、わたしの初恋は拓海だったりする。

いとこ同士で結婚が出来ると聞いたときは心底子ども心に嬉しかった。

でも小学校になるともうそういう感情は自然と消えた。

初恋は実らないなんて言葉作ったひとはほんと偉大だと思う。



今のわたしは拓海には全く恋愛感情はなく、正直どこがいいのだろう?顔だけなのに?という思いでいっぱいだった。

友美の必死の運転のおかげでサバイバーに無事についた。

途中ハンドルがクネクネ曲がったりしてヘナチョコな運転に二人で大笑いしていた。


今、わたしたちは何があっても笑うという楽しいお年頃。



友美は疲れた表情で

『帰りは咲貴が運転だからね!!』

強い口調で言った。



わたしは、わかったわかったと言ってガラっと店のドアを開け中に入った。

忙しそうなおばさんの店員のいらっしゃいませ。という声が聞こえる。


お昼どきとのこともあり、会社員や同じ高校生などで結構賑わっていた。

サバイバーでは窓側の奥に座り、わたしはから揚げ定食、友美はカレーを食べた。

そこでも友美は拓海のことばかり。


拓海には今、大学生の彼女がいてそのことを言ったのに友美は悔しがるばかり。



『拓海は無理だって。あいつ年上好きだもん。』

友美は拓海のことは憧れなだけで、好きではないと思うが、拓海が振り向くならどんな男と付き合ってても別れるといつも言う。

友美は綿菓子みたいにフワッとしていて誰が見てもかわいいと言うだろう。

パーマのかかった茶髪がすごく似合う。


拓海も友美みたいな子に好かれると悪い気はしないだろうが、実際拓海は本当に年下に興味を示さない。

『拓海なんてやめて、いい人さがそうよ。』

今までに何度この言葉を言っただろう。



その時、知美の携帯が激しい洋楽の着うたを鳴らした。

友美は電話に出て話していたが、その会話のテンションからするとたぶん女だろう。

誰もがあるとは思うが、友美も異性と同姓だとちょっとテンションが変わる。

男のときは楽しそうに、女のときも楽しそうだが話し方が違う。

やっぱり女同士となるとちょっと毒舌。




電話を切った友美はジッとわたしを見つめて

『咲貴~!なんか今日地元の友だちが飲み会するらしいんだけど一緒行かない!?友だち1人誘ってって言われちゃってさ。お願いっ!!』

そう言って手をあわせながら上目遣いでわたしを見た。

わたしも所詮普通の女子高生だし男の子の出会いは欲しい。

『暇だしいいよ!!』

とびっきりの笑顔で長いストレートヘアをかき上げながら返事をした。
わたしは今、彼氏も好きな人さえもいない。

憧れな人ならいるけど・・・。

友美も憧れというような人なら何人かいるが、好きとなるとわたしと同じでいないと思う。


わたしたちは久々の飲み会にウキウキした。

『なんか友だちの彼氏とその友だちなんだって!かっこいいからって話。』


この言葉は何よりもテンションが上がる。


わたしたちはサバイバーを出て用意をするため一時解散することにした。

結局帰りも友美が運転して近くのバス停に送ってもらった。


『じゃああとからねー』

黄色い声でまたバイバーイと言ってわたしはやって来たバスに乗った。



バスの中は今日は始業式だからか同じ高校生が何人かと老人が乗っていた。

家まではだいたい15分。

携帯を開いてピコピコメールを打ったり、色んなサイトを眺めた。

ときに窓の外を見ると外はまだ曇っていて雨がいつ降ってもおかしくなかった。

わたしは外を見ながら今日の服装を考えていた。



Gジャンは誰かと絶対かぶりそうだからパス。

あの黒ジャケとこの前買ったミニワンピにしようかな・・靴はどれにしよう・・



色々考えていたらあっという間に最寄のバス停についたので降りた。

すると雨はもう降り出していた。



あぁ、めんどくさい。傘さすの・・



傘を開いた。

わたしは傘が嫌い。

邪魔になるし、表面が濡れてたら閉じたときに服も濡れちゃうかもしれないし。


でも、楽しみのときって不思議。

嫌な雨、嫌いな傘もそこまで嫌気がささない気がした。