「……別にさ、結婚したいとかじゃないんだ。」



椿
「うん。」




「もちろん大好きだけど……重荷には、なりたくないのね?」



椿
「うん。」




「先が見えないって言われれば、それまでなんだけどさ……。」



椿
「苦しくないの?」




「苦しくない。って言えば……嘘になる………。」




 そう呟くと、愛は俯いたまま、今朝の出来事を話し出した………。
一度も口を付けないまま、ホットココアが冷めてゆく。愛はそんなことにも気づかないほど夢中になって、ただ頷いて聞いてくれる椿に自分の悩みを打ち明けた。
昨日まで心底嫌っていた相手に今は、心の内を話している自分自身が愛は不思議で仕方がなかった。椿がそういう不思議な力を持っているのか、それとも単に自分がボロボロで、誰でもいいから聞いて欲しかったのか、そんな事は今の愛にはもうどうでもよかった。