朝食を食べ終わり、片付けをする。
「行ってきま〜す。」と玄関から、耕の声がした。
耕が行くと、次に「行ってきます。」と聖の声がした。
洗い物が終わり、仕事に行く準備をしようとすると、龍がリビングでテレビを見ている事に気が付いた。
「龍。今日、大学は?」と私は聞く。
「今日?今日は午後から。午前中はバイト。」と龍は言った。
「そんなで、取れるの?」と私は聞く。
「大丈夫。」と龍は言った。
「そう。じゃ、私行くね。」と言って、私は家を出て職場に向かった。
龍は、バイトをして私が楽になるようにと、食費を少しだけ稼いできてくれる。
私は、そんな事しないで自分のやりたい事をしっかりとして欲しかった…
仕事が終わると私は、藍の居る病院に向かった。
“日護総合病院”
病院に入り、エレベーターに乗る。5階を押して、壁に寄り掛かり着くのを待つ。
エレベーターを降り、藍の病室に向かう。
ノックをすると、
「どうぞ〜」とまだ、幼さが残る藍の声がする。
「久しぶりだね。」私は入って言う。
「蓮お姉ちゃん!」と藍は嬉しそうに言う。
「お父さんとお母さんは?」と聞くと
「もうすぐ来るよ。」と藍は言った。
すると、丁度のタイミングで親が入って来る。
私の顔を見るなり、笑顔が消える。
「久しぶり。蓮。」と母さんが言った。
「久しぶり。父さん、母さん」と私も言う。
父さんの方に顔を向けると、私の方を睨んでいる。
私達3人の間には不穏な空気が流れていた…
「何しに来た。」と父さんが言った。
「藍の様子見に来ちゃダメ?」と私は言う。
「この前、来るなと言っただろ?」父さんが言う。
「確かに、父さんは言った。けど、藍は何も言ってなかったよね?」と私は言う。
2人は、俯いた。
藍は何が何だか分からないのかキョロキョロと私達の顔を見ている。
「いつも、私達の事気にしない人達より妹の方が大事。違う?」私はさらに追い討ちをかける。
そんな事言っても、彼らには逆上しかないと思っていたが…
「な、何言ってんの?いつ、私達があんた達のことを見てないって?」と母さんが言った。
所詮。私の親はこんなもんだ。
私は、藍に「また来るね。」と言って病院を出た。
家に帰ると5時過ぎ、聖が居た。
「ただいま。」と言うと、
「お帰り。」と聖が言った。
すると、
「ただいま〜」と龍が帰って来た。
「お帰り。」と私は言う。
「はい。買い物して来た。」と龍は私に買い物袋を渡して来た。
「ありがとう。」私は夕食を作る為にキッチンに向かう。
「ところで姉さん。どこ行って来たの?」と聖が言った。
「藍の所。」と私は言った。
「なんか、ごめん。」と聖が言う。
私と聖の間に静寂が訪れる。その空気を壊すかのように、
「ただいま!」と耕が帰って来た。
「今日の夕飯は何?」といきなり耕が言う。
「ちょっと待って、今作るから。」と私は龍が買って来てくれた袋の中身と冷蔵庫を見た。
「龍!手伝って!」私が言うと、
「今行く!」と言ってすぐに来た。

5分して出来上がった夕飯。
食卓に出すと、すぐに座る耕。
どんだけお腹空いてたんだろう…
「先、食べてもいいよ?」と私が言うと、
「いただきます!」と言って食べ始めた。
耕の食べっぷりは、見ていて気持ちが良い。
「俺も、食べよ。」と来る聖や龍。
2人が食べ始めると、私も食べ始める。
軽く食べて、私はデザートの果物を切りにキッチンに向かった。
冷蔵庫の中から、桃とリンゴを取り出す。
皮を剥き、3人の好きな形に切ってお皿に盛る。
リンゴを星の形に切り、ヨーグルトの
中に入れる。
それを食べ終わったであろう、彼らに持っていく。
「はい。デザート。」と出すと、笑顔を見せる。

「本当、好きだよね。」と私は食べている彼らに言う。
「だって、姉さん。俺らの好きな形に切ってくれるじゃん。」と耕が言う。
「うん、うん。」と2人も頷く。
「そっかぁ」と私は昔の事を思い出しながら言った。
「ごちそうさま」と3人は言う。
「あっちに持ってとくよ。」と聖は言って、食器を片付けてくれた。
「ありがと。」私は言って、キッチンに向かった。
彼らは、昔からデザートに桃とリンゴを食べていた。
私は、3人が喜んでくれたらと思って、中学生ながら作ったのが始まりだった。
龍は普通にくし切り。
聖はくし切りで星になるように。
耕はウサギのように。
私は頑張って作っていた。藍だけが食べる事が出来なかった…

私は食器を洗う為に食器を取った。
ポタリ と赤い液体が白い食器の上に落ちた…
鼻血?私は手で拭う。
ポタッポタッと血が落ちてくる。
「うっ」私は口元を手で覆う。
気が付いたら私は倒れていた。
龍達の焦る声がどこか遠くで聞こえていた…
起きるとそこは、病院だった…
私はナースコールを押す。
すると、先生や看護師さんが来た。
「立川さん。起きましたか?」と先生が言う。
「はい。あの、私は…」と言うと、先生達は表情を暗くする。
「立川さん。こちらには、あなたの妹さんが入院してるとか。」と先生が言う。
「はい…」私はなぜそんな事を…と思いながら言った。
「そうですか。ご両親にも聞いて頂きたいので来てもらう事は可能ですか?」と先生は言った。
「わかりません…」私はそう言う事しかできなかった。
「わかりました。」と先生は病室を出て行った。
「立川さんは待っていてくださいね。」と看護師さんに言われ、私はベッドに横になった。
病室に弟から親が来たのは、5分後だった…
不機嫌な両親を見るのは胸が痛かった。
だが、「蓮お姉ちゃん。大丈夫?」と心配してくれる妹がいた。
「大丈夫だよ。」私は弟達の方を見ながら言った。彼らは、下を向いていた。あれは、何か知っているようだった…

「では、立川さん。単刀直入に言わせて頂きます。立川さんは、悪性リンパ腫です…」と先生は言った。
両親は一瞬目を見開いた。だが、すぐに元に戻った。
「生存率は80%です。」と先生が言った。
「80%…」私は呟いた。

「ところで、なんで私達を呼んだんですか?」と口を開いたのは母さんだった。